【越山若水】「真正の利殖は仁義道徳に基づかなければ、決して永続するものではない」。日本資本主義の父といわれた渋沢栄一の訓話をまとめた「論語と算盤(そろばん)」にある言葉だ。孔子の教えとして、正しい道理にのっとって得た富や地位なら「持っていても何ら恥じることはない」とも述べている▼関西電力の会長らが、高浜原発がある高浜町の元助役から多額の金品を受領していたことが分かった。疑われているのは、原発の工事発注に絡んで元助役に巨額の金が渡り、関電幹部に還流したのではという点▼幹部は金品の返却を試みたが拒まれ一時的に個人の管理下で保管していたそうだ。元助役が地元の有力者で、返却による関係悪化を恐れたというが「正しい道理」とはとてもいえまい。「持っていて恥じること」はなかったか▼渋沢は1914(大正3)年に発覚したシーメンス事件について言及している。ドイツのシーメンス社による日本海軍高官に対する贈賄事件だ。当時の政界を巻き込む一大疑獄事件に発展した。「実業界に不正の行為が後を絶たぬようでは、国家の安全を期することはできない」と憂えた▼2024年度から新1万円札に登場する渋沢はこうも語った。「お金自身にはよいお金と悪いお金とを判別する力はない。善人が持てばよいお金、悪人が持てば悪いお金になるだけだ」。善人に持ってもらいたいだろう。

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