【論説】存続が危ぶまれた地域医療の問題を行政、医療者だけに任せず、高浜町民自らが、できることをこつこつ続けてきた。町民でつくる「たかはま地域医療サポーターの会」が9月で発足10周年を迎えた。地域全体で医療を支える仕組みづくりは徐々に結実。町民の医療や健康への関心が高まり、医療者が研修に来たくなるまちに生まれ変わった。「継続は力なり」を信じた会員の努力のたまものだ。

 会が発足した2009年は町が医療崩壊の危機に直面していた。かつて13人いた常勤医は08年には5人に減少。しかし町民は隣接市町の病院へ通い、医師不足に直面している町の現状に目を向けなかったという。

 「地域医療を一緒に守りませんか」。危機感を抱いた高浜町国保和田診療所の医師、井階友貴さんが09年7月に開かれた第1回町地域医療フォーラムで町民に協力を呼びかけた。賛同した十数人で同年9月9日に会が発足した。

 町民による町民への啓発が始まった。急な病気、けがで、どういった症状なら救急車を呼ぶべきかを冊子「救急受診チャート」にまとめて発行。軽症者のコンビニ受診や、緊急性がないのに救急車を使う受診を減らし、医療者の負担軽減にも一役買った。

 検診受診、かかりつけ医を持つことなどを呼びかけるビデオ3本を会員自らが出演して制作した。毎月1回勉強会を開き意見交換。1~2年ごとの地域医療フォーラムでは企画、運営に関わった。10年、12年のアンケートでは会の認知度が上がるとともに、かかりつけ医を持つ人の割合が増えていった。

 医療者との連携でも大きな成果を手にした。町民と医療者との意見交換会を開催し、「かけはしメールボックス」では投函(とうかん)箱に寄せられた町民の聞きたいことを会員が医療者に尋ねて回答。「医療者の努力を間近で見る機会が増えるにつれて、会員たちも支援したいとの思いを強くしていった」と町保健福祉課職員は会員の変化を語る。

 町民が医療者を支える姿は、医療や看護を学ぶ学生たちにも魅力的に映る。町には年間120~130人の学生らが研修に訪れる。「若い医師は患者から見下され、居場所がないと感じることがある。でも、高浜では住民が医療の味方になってくれている」と井階さん。高浜はいまや「研修、赴任したくなる町」。常勤医は13人になった。

 会員は50~60代中心の37人。10周年を祝う会では「まだまだお役に立ちたい」と意欲的だ。無理せず、できる範囲で活動するスタイルが長続きの秘訣(ひけつ)。今、目指すのは町民皆が健康なまちづくり。会員たちの新たな歩みを見守りたい。

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