【論説】日本高野連が設けた有識者会議が、週500球の投球数制限を同高野連理事会に提言すると決めた。具体的な基準が打ち出されたこと自体は、選手の故障防止に向けた前進といえる。

 だが、提言は1試合の制限に踏み込まなかった。現場への影響を極力抑えようとした結果では、との声が早くも上がっている。投球数制限のほかに、検討すべきことも多い。球児を故障から守るため、さらに議論を続ける必要がある。

 有識者会議が決めた提言は▽春夏の甲子園大会と地方大会を対象に「1週間で500球」の投球数制限導入▽3日連続の投球禁止▽来春の選抜大会からの導入を見込むが、3年間はルール化せずに準備や検証の期間とする―など。同高野連は金属製バットの高い反発性能を見直し、木製バット並みに抑えることにも着手する。

 今夏の甲子園は投球数、登板間隔などで1人の投手に負担をかけすぎないよう配慮したケースが複数あった。故障防止の意識が現場に広がりつつある表れだろう。関係者には、投球数制限の導入によって指導者の意識が一層高まり、子どもを守ることにつながるなどと、前向きな受け止め方がある。

 ただ、週500球の制限は、日本臨床スポーツ医学会の提言に基づくもの。1995年に出された医学会提言は同時に「高校生は1日100球以内」を明記していた。それが有識者会議の提言では抜け落ちた。3連投禁止は2連投にお墨付きを与えたとも受け取れる。高校生は中学生以下と比べ、投球数と故障に関するデータが薄いとされ、厳しい制限に踏み込めなかった可能性がある。

 数字の上では、2連投で150球ずつ、その後に中2日で150球を投げたとしても、制限まで50球の余裕がある。これは制限といえるだろうか。プロや中学生以下ではほぼあり得ないと思われる投球数が、高校生には認められることになる。

 医学会提言にかかわり、高校野球の大会前検診にも携わっているスポーツドクターの正富隆氏は、6月の有識者会議の第2回会合で厳しい指摘をしている。「全ての指導者が素晴らしい人なら、私たち医者は制限などと言わない。残念ながら、つぶされている選手をたくさん診ているから、何とか制限で守るしかないと思っている」

 今回の提言は、あくまで出発点だと理解すべきだろう。投球数制限の内容だけでなく、大会日程の見直し、ドーム球場使用の可否など、故障防止に向けてさらに尽くすべき論点は多い。子どもたちの健康を守るために、聖域を設けない真摯(しんし)な議論を望みたい。

関連記事