【論説】16歳の少女の演説は多くの人の心に突き刺さったのではないか。とりわけ安倍政権は日本への批判だと受け止めるべきだ。

 スウェーデンのグレタ・トゥンベリさんが国連で開かれた「気候行動サミット」で演説し、「必要な政策も解決策もまだ見当たらないのに、目を背け、ここに来て『十分やっている』なんてよく言えるものだ」などと、温暖化防止策の不十分さを痛烈に批判した。

 トゥンベリさんは2018年に授業をボイコットし、国会前での抗議の座り込みを開始。その姿が若者らの賛同の輪を広げ、各国の「学校ストライキ」運動に発展した。サミットなどへの参加には二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの排出を抑制するため飛行機を使わず、ヨットで渡米する徹底ぶり。20日に世界各地であった一斉抗議行動には150カ国以上で数百万人が参加したとされる。

 演説で目を引くのは、世界のCO2排出許容量など具体的なデータを挙げ「現状のレベルでは、残された排出許容量に8年半もたたずに達してしまう」と警告したこと。国連のグテレス事務総長の主催で開催された気候行動サミットでは、77カ国が50年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする長期目標を表明した。

 だが、日本は6月に閣議決定した長期戦略で、50年までの削減目標を80%減、排出実質ゼロとする「脱炭素社会」の最終到達点は「今世紀後半のできるだけ早期に」とするにとどまっている。長期戦略を練る有識者懇談会の当初案では石炭火力を「全廃」としたが、経済界代表らの反発で「依存度を下げる」に後退した経緯がある。これでは決意表明の演説の機会は与えられるはずもない。

 長期戦略はイノベーション(技術革新)による脱炭素社会、経済成長の実現を目指すとしている。ただ、具体的な技術革新の中身には、発電所などからのCO2の回収・再利用や人工光合成といった実現性に疑問符がつくものが少なくない。

 トゥンベリさんは演説で「私たちの世代が(現時点で)ほとんど存在していない技術で吸収することを当てにしている」「あなたたちが話すのは金のことと、永遠の経済成長というおとぎ話だけ」と述べたのも、日本をはじめ排出ゼロに後ろ向きな国々の論理を熟知しているからだろう。

 温暖化の影響は台風や豪雨など日本でも深刻さを増している。サミットに出席した小泉進次郎環境相はトゥンベリさんの演説に心を動かされたようだが、今後の環境政策にどう生かすか。不参加を決めた安倍晋三首相こそ傾聴すべきだった。日本が「環境先進国」を名乗れる資格があるのか、問い直す必要がある。

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