【論説】千葉県で大規模停電を引き起こした台風15号の被害が、発生から2週間近くたっても深刻な状況から脱せられずにいる。地元自治体は停電の対応に追われ、被害の全容の情報が出そろってこない。家屋被害は20日朝の時点で約1万戸に達したが、さらに増えるだろう。

 今回の台風は、ライフラインの根幹である電気が長期間絶たれる怖さをまざまざと見せつけた。まずは被災地の支援を最優先に行わなければならないが、今後の検証と対策は不可欠だ。すべての自治体に、わがこととしての対応を求めたい。

 ■情報のつまずき■

 停電復旧に当たる現場の作業員は、車中泊を余儀なくされるケースもありながら、限界まで努力を続けている。二次災害に注意して、住民の期待に応えてほしい。

 ただ、9日の被害発生直後の東京電力の情報提供は、やはり問題があった。「11日中の復旧を目指す」との当初の広報は、結果を見れば「現場の状況を把握しないまま行われた」のが明らか。甘い見立てが発信されたために各関係機関に緩みが出た可能性もある。経緯の検証が必要だ。

 各電力会社や政府は、災害発生時の情報収集について、ドローン(無人機)の活用など手法を見直すべきだ。ドローンは技術開発で航続距離が延びているし、3Dレーザーを使える機体も開発されている。装備や手順を早急に整えたい。

 ■自治体の限界■

 災害発生後の課題として浮かび上がったことは多い。

 まず、医療機関や福祉施設の電源確保策が至急検討されるべきだ。医療機器が使えなくなることで、命にかかわる患者や入所者がいる。

 しかし停電が長引き、ガソリンなど非常用発電機の燃料が切れる事例が伝えられ、その時点で既にガソリンの販売なども滞っていた。停電と同時に断水した施設も多かった。各施設の自力対応だけでは追いつかない事態だろう。

 広範囲で家屋が損壊した場合のブルーシートの重要性もクローズアップされたが、品不足の上に地域への情報伝達手段が喪失して配布が停滞した。屋根に設置する業者も足りていない。このため自宅の作業を試みて死傷する例があった。悪質業者の詐欺まがいの行為も問題となった。

 停電復旧のための倒木除去についても、専門的な知識と技術、装備を要するため、電力会社だけでは困難なことが明らかになった。

 これらの課題すべてに向き合うのは個別の自治体の能力を超えていると考えざるを得ない。防災体制をどう整えるか、日本社会は厳しい問いにさらされた。さらに、道路や電線網などのインフラ充実、倒木を起こしにくい森林の在り方など、中長期的な社会づくりも検討が必要だ。

 ■家庭で話し合いを■

 各家庭でも教訓をくみとりたい。従来は水や食料の備蓄は3日間がめどといわれたが長期停電下では全く不十分だった。暑さ寒さをどうしのぐかも命を守る重要課題だと痛感させられた。現金の持ち合わせも貴重だったろう。

 どう備えるかは、住居の損壊具合や気候、家庭にお年寄りや乳幼児、妊婦らがいるかで変わってくる。防犯にも注意が要る。家庭や地域、職場などで細かく話し合っておくことが重要になる。

 強風被害は昨年9月の台風21号も記憶に新しい。台風15号の経験を国全体の防災力向上につなげないといけない。この3連休も台風17号に警戒を強めたい。

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