【論説】ラグビーワールドカップ(W杯)が始まった。白熱の攻防を一目見ようと、国内外から多くの観客が足を運ぶなど経済効果も期待される。国内では来年の東京五輪など一大イベントが続き、国などが提唱するスポーツによる地域活性化へ向け取り組みが進む。福井県内をみると、若狭町で7年前からスポーツを通して県外客を呼び込み、着実に関係人口を増やしている団体がある。田舎における活性化に向けた、指標となる可能性が見て取れる。

 若狭路活性化研究所は若狭町海山を拠点に活動する一般社団法人だ。現在、大きなイベントとしては若狭路センチュリーライドや若狭路トレイルランなどを企画運営している。

 センチュリーライドは自転車で最長約160キロを走り抜ける。海岸や湖沿いなど、風光明媚(めいび)で起伏に富んだコースは多くのライダーを魅了し、今年5月の大会では1200人の参加枠が募集開始3日間で埋まるほどの人気を博している。

 トレイルランは最長40キロ超の道のりを景色を堪能してもらいながら海沿いや山道を走るもので、今月末に開かれる大会は、過去最多の千人がエントリーしている。

 いずれも県外からの参加が多く、センチュリーライドは約9割を県外客が占め、遠くは北海道や沖縄から訪れる。大会前日には前泊する参加者で若狭地域のホテルや民宿などが埋まるほどのにぎわいを見せる。

 もともと若狭地域を盛り上げたいと発足した同研究所がスポーツツアーに着目したのは、美しい若狭の自然や食など、田舎であることの強みを発揮できるとの考えからだ。さらには走り抜いた達成感、同じ趣味の人が集まる連帯感などが得られることで人気が広がり、リピーターが増えるという好循環が続いている。

 給水所やゴール地点での特産品の振る舞いや販売のほか、沿道での声援など、地域の協力もイベントの魅力となっている。

 同研究所の田辺一彦代表は「新たな幸せの形を探り、提案してきたことが今につながっている」という。自然や文化、歴史、食といった地域の魅力を伝え、人のつながりを大切にし、お金では買えない価値観を共有する。都会では得られない幸せの提供が、田舎に人が集う原動力となっていると分析する。

 同社ではイベント運営のほか、年8回の講義などがあるビジネスカレッジなども展開する。田舎には隠れた魅力が多くある一方、それをうまく活用できる人が少ないのも事実だろう。地域活性化のために必要な人材の育成から始めようというのがカレッジの狙いだ。地道な取り組みだが、花開くことを期待したい。

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