【越山若水】室町末期の連歌師、山崎宗鑑はウイットに富んだ作風を得意とし俳諧の祖とも呼ばれた。特に著名な和歌の後にくっつけてオチを付ける、万能の下の句を考案したことで知られる▼その名文句が「それにつけても金の欲しさよ」。公家との連歌の席で、宗鑑は新古今集の「田子の浦にうち出でてみれば白妙の…」に「それにつけても金の欲しさよ」と続けた。富士の高嶺(たかね)に降る雪の風流より、もっとお金があればと思う―と庶民の本音を代弁した▼お金に苦労したのは、戦国時代の大名も同じだった。領地を守るのはもちろん、主君の命令で出兵するにも軍資金が必要で、財源の確保は大変だったようだ。その負担は結局、領民に重くのしかかった(「戦国武将に学ぶ『必勝マネー術』」(橋場日月(あきら)著、講談社)▼例えば加賀百万石を築いた前田利家の場合。豊臣秀吉の朝鮮出兵に伴う軍役や佐々成政との戦いで出費がかさみ、開墾した新田の税金を「二免四分増(にめんしぶまし)」にすると宣言。今まで通常の田より安かったとはいえ、24%もの増税に農民が故郷を捨てる逃散が相次いだという▼さて令和の日本、来月から消費税が10%に増税される。国と地方の借金は1千兆円を超える財政危機。一方で、年金では老後2千万円も不足するという。庶民の心境を万葉集の歌で表せば…。「銀(しろがね)も金(くがね)も玉も何せむに それにつけても金の欲しさよ」

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