【論説】世界の原油供給量の5%以上を生産するサウジアラビアの石油施設が攻撃されたことを受け、原油価格急騰への懸念が高まる中、サウジ政府は復旧が進んだとし、今月末までに生産量が通常に戻るとの見通しを示した。ニューヨーク先物相場などでは先物価格が大幅に反落するなど、原油価格や世界経済への影響は回避されそうだ。

 ただ、犯行声明を出した隣国イエメンの親イラン武装勢力フーシ派は再度の攻撃にも言及しており、予断を許さない。中東情勢は間違いなく緊迫の度を深めており、原油価格の高騰につながる一触即発の事態も起こりかねない。日本は来月1日に消費税増税がスタートする。石油の値上げなどが重なれば、経済へのダメージは計り知れない。

 まずはフーシ派の犯行なのか見極める必要がある。サウジは2015年にイエメンに軍事介入し、フーシ派へ激しい空爆を行ってきた。今年9月1日の空爆では少なくとも60人が死亡したとされる。石油施設への攻撃はフーシ派の「報復」とみるのが自然だろう。

 だが、犯行声明で「無人機(ドローン)10機で行った」としたが、攻撃を受けたのは19カ所で、無人機で可能だったのか疑問視されている。さらに、イエメンから今回の現場は距離がありすぎるとの指摘がある。

 イランは数千キロを飛ぶ米国製のドローンを手に入れ量産しているという。サウジ政府は破片などから「イラン製」と発表。米国はドローンの飛行方向などからも「イランの犯行」とみているが、明確な根拠は示していない。サウジは国連の調査を求めており、第三者による精査は欠かせない。

 気がかりなのは、イランとの対話に前向きな姿勢を見せ始めたトランプ米大統領が、この攻撃で窓口を閉ざしてしまうことだ。イランの最高指導者ハメネイ師も「米国と交渉することはない」と明言し、間もなく開催される国連総会に合わせたトランプ氏とイランのロウハニ大統領との会談実現は困難になった。

 6月にイランを訪問した安倍晋三首相には、両国を取り持つ役割を求めたい。国連総会を機にトランプ氏とロウハニ氏双方と会談する予定とされ、緊張緩和に向け両国の対話を強く働き掛けるべきだ。日本はサウジに全原油輸入量の4割近くを依存している。ロウハニ氏に、フーシ派へ自重を促すよう求めることは日本の国益にも資する。

 不測の事態に備え、備蓄原油の活用準備も進める必要があるだろう。日本は国内消費量の230日分を超える備蓄があるが、さらに積み増すことも考えたい。国際エネルギー機関(IEA)や他の加盟国と連携し備えるべきだ。

関連記事