【論説】消費税が8%から10%にアップされる10月1日まで残り2週間を切った。米中貿易摩擦や日韓対立、英国の合意なき欧州連合(EU)離脱、不穏な中東情勢などいくつもの危機を抱える中での導入となる。だが、上げるからには円滑なスタートを切る以外にない。

 1989年に消費税が導入されて以来、3回目の税率アップで、初めて軽減税率が適用されるのをはじめ、キャッシュレス決済時のポイント還元も導入される。ただ、制度が複雑で店頭でのトラブルも想定される。納税申告での混乱も指摘されている。政府は企業、消費者向けのPRを充実させるなど全力を尽くす必要がある。

 家計の負担軽減を目的とする軽減税率では、飲食料品や定期購読される新聞の税率が8%に据え置かれる。問題は同じ飲食料品でも店内で食べる場合、10%になる点だ。持ち帰りも可能なハンバーガーチェーンや牛丼店などでは、消費者の悩む姿が出てきそうだ。

 日本マクドナルドなどは、本体価格を下げ、店内飲食と持ち帰りの税込み価格を同一とした。牛丼の松屋やすき家なども足並みをそろえる。分かりやすさとレジでの混乱回避、利便性を重視したのだろうが、結局は値下げであり、企業側の負担が増す格好だ。一方で差をつける業者も多く、レジでトラブルなどがあれば、店の評判を落としかねないリスクがある。

 キャッシュレス決済によるポイント還元は、景気の落ち込みを防ぐために導入される。当初は2%案だったが、安倍晋三首相の肝いりで中小事業者に限ってアップ率以上の5%が来年6月末まで適用される。ただ、対象とされる約200万の中小事業者のうち導入するのは3割の約60万にとどまっている。これでは中小事業者へのてこ入れ効果は期待できない。

 クレジットカードやスマホなどによる決済時のポイント還元は国の予算で賄われる。カード会社に支払う手数料は上限が設定されているが、来年7月からは負担料が重くなるとされ、業者がこれを嫌って導入が進まないとの指摘がある。さらに、消費者側も高齢者や子どもなどキャッシュレス手段を持たない層が置き去りになりかねない。

 厄介なのは、同じ店でもフランチャイズ店と直営店で対応が異なるケースがあること。コンビニ大手3社は自社負担により全店で還元を実施する。ここでも企業側が負担を補う形だ。

 政府は円滑な導入で景気の腰折れを防ぎたいとするが、制度が複雑すぎて浸透するかは見通せない。一層の周知徹底を図るべきであり、企業側も自社の対応をアピールするなど取り組みの強化が求められる。

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