【越山若水】世界的によく知られた日本人作家に谷崎潤一郎がいる。中でも人気の高い小説が「ザ・マキオカ・シスターズ」。大阪の旧家を舞台に4姉妹の悲喜こもごもを描いた「細雪」である▼国内では「日本の伝統的な美を表現した作品」と評価される。しかし小説家の柳広司さんは純和風のタイトルにだまされているという。物語は意外なほど起伏が激しく、破産あり、洪水あり、婚外子の出産あり、医療過誤の壮絶死もありと、波瀾(はらん)万丈の展開を見せる▼むしろこの小説が軍部の発禁処分を受け、谷崎自身が「職業作家たるもの読者におもねる作品ぐらい書けなくてどうする」とうそぶいていたことから、どぎつい作風で世に出る戦略、今で言う「炎上商法」だったと推測する(「二度読んだ本を三度読む」岩波新書)▼さて、くだんの国会議員も同じ戦略だろうか。「竹島も戦争で取り返すしかないんじゃないですか?」。丸山穂高衆院議員のツイッターである。5月には酒に酔って「北方領土を戦争で取り返すのは賛成ですか?」と発言し、糾弾決議案が可決されても全く懲りない▼常軌を逸した振る舞いにあきれるが、所属のN国党首は「問題提起している」と擁護する始末。度重なる過激な言動は選挙目当ての「炎上商法」と批判も出ている。独創性を目指す芸術家ならともかく、国民の負託を受けた政治家には禁じ手である。

関連記事