【越山若水】画家の横尾忠則さん(83)が80歳以上の9人のクリエーターに、長寿と創作の秘密を尋ねた。その対談集「創造&老年」(SBクリエイティブ発行)に登場する建築家磯崎新さん(87)は「建築屋は身体が働かないと頭がついてこない」と、身体の重要性を語っている。そのため体調に合わせた仕事をしているという▼磯崎さんは今年、「建築界のノーベル賞」といわれる米プリツカー賞を受賞した。これを記念して、磯崎さんが設計し1983年に完成した勝山市の「中上邸」があすまで一般公開されている▼医師で美術コレクターの故中上光雄さんの個人宅だった。コンクリート打ちっ放しで、カエルの目玉が二つ飛び出たような奇抜な屋根が目を引く。一度見たら忘れられない建物だ。内部には、「美術愛好家が集うサロンに」との中上さんの希望で設けたホールがある▼作家を招いた講演会や展覧会、作品頒布会が開かれ、作品を購入することで若き芸術家を支援する「小コレクター運動」の拠点になった。現在の住宅は普段閉じられているが、今回は磯崎さんの版画などが展示され、当時の熱い雰囲気が伝わってくる▼運動を推進し、中上邸を管理する荒井由泰さん(71)は、近くにある磯崎さん設計のS邸とともに「貴重な文化財として守り、活用したい」という。地域に根付いた名建築が再び脚光を浴びる日が待ち遠しい。

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