【論説】米政権高官で最も対外強硬派だったボルトン氏が、国家安全保障問題担当補佐官を解任された。任命責任者のはずのトランプ大統領は、ボルトン氏のタカ派政策の多くに「全く同意していなかった」とツイートしている。中国、北朝鮮、イランなどを相手に対立を繰り返している米国外交は転換点を迎える可能性がある。

 対話重視の柔軟路線に移行するのであれば、基本的には歓迎したい。問題はトランプ氏が、外交の原則をゆるがせにしないで腰を据えた交渉に取り組めるのかどうか。来年11月の大統領選挙を控え米国民へのアピールにばかり目が向いているようだと、合意という成果を優先するあまり、北朝鮮に対する姿勢が融和に傾きすぎる恐れがある。

 12日、米政権から複数の情報発信があった。▽米朝首脳会談の年内実施にトランプ氏が意欲▽中国との貿易摩擦で、暫定合意の検討にトランプ氏が言及▽対イランの圧力緩和に米政権が柔軟姿勢―などである。ボルトン氏が政権を去ってすぐ、米政権は矢継ぎ早に対外的な手を打ち始めた。

 トランプ外交の特徴は対立国に圧力をかけて追い込み、首脳の直接交渉に持ち込んで決着を迫るやり方。当局者同士が交渉を重ね合意点を見いだす従来型の外交とは一線を画している。ただ、軍事介入は米国の負担も大きくなるとして否定的とみられる。

 一方のボルトン氏は、核保有阻止やテロ根絶を最優先とし、北朝鮮やイランへの攻撃も辞さない考えだった。米朝首脳会談で、トランプ氏に譲歩しないよう助言したのもボルトン氏だった。解任を受け、イラン問題では米国内からも「戦争の危険が減った」との声が上がる。

 気がかりは、北朝鮮の非核化交渉の行方である。完全で不可逆的な非核化が終わるまで一切譲歩しない、との姿勢はボルトン氏が主導してきた。この点では「米政権内の日本の味方」(政府関係者)だった。

 トランプ氏は自身が政策判断の最終責任者であるにもかかわらず、ボルトン氏によって米朝関係が「大惨事」になったと批判している。今後、何らかの姿勢の変更があってもおかしくない。日米安保条約不要論を口にしたこともあるトランプ氏の振る舞いには注意が要る。

 日本は内閣改造で、外交・安全保障の担当大臣が交代したばかり。安倍政権は早急に米側と意思疎通を図り、対北朝鮮政策の原則維持に努める必要がある。核兵器や中・短距離ミサイルの能力の保持を北朝鮮に認めるような合意は避けるよう、働きかけを強化しなくてはならない。

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