【論説】内閣改造と自民党役員人事に関して安倍晋三首相は「安定と挑戦」をキーワードに掲げた。顔ぶれを見れば屋台骨となる陣容は留任や横滑り、再任に加え側近の重用が際立ち、「安定」を優先させた守りの布陣としか映らない。「挑戦」と思われるのは小泉進次郎氏を環境相として初入閣させたことぐらいだろう。

 19閣僚のうち17人が入れ替わったが、2012年の第2次安倍内閣発足以来、首相を支え続ける麻生太郎副総理兼財務相と菅義偉官房長官は留任。重要閣僚である外相には茂木敏充経済再生担当相、防衛相には河野太郎外相が横滑りした。高市早苗総務相と加藤勝信厚生労働相は再登板だ。

 初入閣は安倍内閣で最多となる13人と、清新さを印象付ける狙いだろうが、実際には河井克行法相や萩生田光一文部科学相、江藤拓農林水産相ら官房副長官や補佐官として首相に仕えた側近を多く起用している。「身内」による忖度(そんたく)政治のまん延が危惧される。

 野党からは「首相のお友達で固めた在庫一掃内閣だ」「挑戦の要素が感じられない。党内融和と首相の権力基盤強化を優先させた結果だ」などと批判の声が上がる。「待機組」の起用では適材適所なのか否か、野党の国会追及で明らかになってくるだろう。

 唯一のサプライズ人事となった小泉氏にしても環境分野は未知数とされる。首相は会見で「若手ならではの斬新な発想を期待したい」としたが、歯に衣(きぬ)着せぬ発言が批判を招く恐れも否めない。五輪担当相に起用された橋本聖子氏は冬季五輪メダリストであり、五輪組織委員会の理事なども務める。時にブレーキ役も求められるはずだが、機能するのか、疑問符が付きかねない。

 首相は党役員会で「わが党の長年の悲願である憲法改正を党一体となって力強く進めていきたい」と述べている。だが、党憲法改正推進本部長だった下村博文氏は党選対委員長となり、後任の発表はなかった。下村氏は野党が憲法論議に消極的だとして「職場放棄」と挑発し、審査会論議を停滞させた経緯がある。ベテラン議員の起用を探っているとされるが、火中の栗を拾う人材はいるだろうか。

 日韓関係や日米通商交渉、不透明感が増す経済環境、持続可能な社会保障制度の構築など、外交、内政の難題が山積している中、新内閣はどう克服していくのか。まずは国会論戦から逃げずに説明責任を果たす必要があるが、4月以降、衆参の予算委員会は開かれない状況が続くなど「1強」体質は払しょくされたとは言い難い。11月に憲政史上最長となる安倍政権には幅広い合意形成に尽くす姿勢こそが求められる。

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