【論説】地方創生が叫ばれながら、東京への人口一極集中の是正は遅々として進まない。地方は縮むばかりであり「限界集落」は無論、地方都市の「消滅」も現実味を帯びる。福井県も約20年後には63万人と現状の8割に縮むという。

 疲弊する地域を座して見ているだけでいいのか、地域の未来は自分たちの手で切り開かなくては―。そんな地域住民や団体を応援しようというのが「あすの福井県を創る協会」主催の「元気なふるさとづくり活動賞」だ。

 ■地域農業担うNPO■

 この賞は地域のさまざまな課題を自らの手で解決し、住みよい地域を創造する団体などを顕彰しようと2008年にスタート。過去に「若狭熊川宿まちづくり特別委員会」(若狭町)、「小原ECOプロジェクト」(勝山市)などが最優秀賞に選ばれている。

 令和初となる本年度は10件の応募があり、「まちづくりのむきの会」(同市)が最優秀賞に輝いた。注目したいのは野向町全世帯193戸が会員となる特定非営利活動(NPO)法人を発足させ、「まちづくり」に徹する姿勢だ。

 活動のメインは健康ブームに乗るエゴマ油の生産。約5ヘクタールで栽培し同市のふるさと納税の返礼品として人気が高い。栽培法の工夫でコメ以上の収益が見込めるという。

 多彩な作物も栽培し、四季折々の収穫祭などを通じて加工品の販売も手掛ける。中山間地は耕作放棄地の拡大が危惧される中、先進例ともいえる活動だろう。

 ■ゆるキャラで一体感■

 優秀賞の一つ「松本地区まつり振興会」(福井市)は、独自のゆるキャラ「松くん」づくりが地域の一体感を高めた点が評価された。地元の中学生がデザインしたキャラクターを基に、エコバッグ販売などで寄付を募り、着ぐるみ製作にこぎつけた。

 着ぐるみは地元の高校生らが演者を務め、地区内の店舗などと連携し関連商品の開発、販売にも取り組む。松本地区はマンションが多く、地域のつながりが希薄になりがち。「人こそ地域の宝」とのコンセプトが結実した活動だ。

 優秀賞のもう一つはマラソンとピクニックを融合させた大会を主催する「東尋坊愛のマラニック実行委員会」(坂井市)。東尋坊という僧が没した地と、住んだ平泉寺を結ぶ物語性あるコースが舞台だ。各給水所で地元高齢者らが伝承料理などでもてなし、参加者から好評を得ている。

 8回目の今年は過去最高の563人が参加。特筆すべきは外国からの参加が11人あったことだ。訪日客は体験を重視する傾向にあり、福井をアピールするイベントとしての可能性に期待が高まる。

 ■熱い思いに住民結集■

 先日福井新聞社で開催された「考福塾」で、JTB代表取締役会長執行役員の田川博己氏は「本当の観光地はどこかというと実は『生活地』」と述べている。

 のむきの会は生業(なりわい)そのものであり、松本地区のゆるキャラは住民の心や日常の一部になりつつある。東尋坊マラニックは伝承料理や手厚いもてなしが魅力になっている。「生活」が息づく活動として観光の目玉にもなり得るのではないか。中山間地、都市部住宅街、広域圏と県内の地域性を集約する活動として、他地域の刺激にもなるだろう。

 「近隣地域や市全体に活動の輪を拡大したい」(のむきの会)など3団体の中心メンバーは今後の展望を熱く語っている。こうした熱い思いが地域住民を動かし、活動をより確かなものにしていることも見逃せない。

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