6年かけて踏破した福井県境ルートを示す武田雅之さん=福井県鯖江市の福井新聞鯖江支社

 福井県越前町の会社員、武田雅之さん(60)が、2013年から6年かけて単独行での福井県境踏破を達成した。372・8キロの道のりを63回に分けて歩ききった。県内では1978~80年に福井山岳会が県境縦走を行ったことがあるが、登山道のない危険なルートとあって、単独では珍しいという。武田さんは「やぶだらけの道なき道を歩き、苦労も多かった。大仕事を終えた気分」と振り返った。

 武田さんは15年前から登山を始め、2012年に滋賀との県境の中央分水嶺(れい)を歩くイベント「高島トレイル」や「余呉トレイル」を経験した。「ほかの県境も歩いてみよう」と一念発起した。

 最初に挑戦したのは「越美国境」と呼ばれる、岐阜県との県境の一部。登山道は基本的に整備されておらず、やぶが深すぎるため、あえて雪が積もる冬場や、残雪がある春先を中心に挑戦した。ただ「雪深い国道158号から入山地まで行くことや、下山地から国道に戻るまでも困難を極めた」そうだ。

 衛星利用測位システム(GPS)と地形図で位置を確認し、前回歩いた所から再度挑むという行程を繰り返した。14~15年に挑んだ、大野市と岐阜県本巣市の境にある屏風山(標高1354メートル)が一番難しかったという。初回は装備の不備で途中下山。2回目は尾根のルートで挑んだが想定したほど雪がなく、密集したやぶに阻まれ、16時間歩いたものの断念した。3回目に沢登りでクリアした。

 越美国境を3年2カ月かけて歩いた後は、京都との県境、岐阜との県境の残り、滋賀との県境の順で踏破。最後は今年7月、あわら市と石川県加賀市との県境に挑んだ。2メートル近いやぶをかき分け、ゴルフ場の裏手を「不審者に思われないか」と心配しながら歩き、あわら市浜坂の福井県最北端にたどり着いてゴール。「日本海の海面に触れて達成感を味わった」という。

 武田さんは「還暦の年に達成でき、ほっとした。何度も見かけた霧氷の美しさには感動した」と語った。

 約40年前の福井山岳会の県境踏破に参加した県山岳連盟の牧野治生会長は「登山道がない県境は、地図とコンパスを使う技量と体力がないと難しい」と指摘。全国的に登山遭難者数が増加している中、「県境に限らず、単独行は危険。登山計画書を提出し、安全面で十分に配慮をしてほしい」と呼び掛けている。

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