給食中、園児と談笑する菅原綜馬さん=8月、福井県越前町の「はぎのこども園」

 肢体不自由で、注意欠陥多動性障害(ADHD)の男性が4月から、福井県越前町の認定こども園で、事務員として働いている。「子どもたちに、いろいろな人がいることを知ってほしい」。障害者への差別や偏見がない社会を望み、日々の仕事に励んでいる。

 男性は同町の菅原綜馬さん(22)で、4月から「はぎのこども園」で働いている。未熟児で生まれ、両手両足にまひがある。ADHDのため、空間認知やスケジュール管理などが苦手だ。

 高校卒業後、仁愛大学に進学し人間学部コミュニケーション学科で学んだ。就職活動は障害者雇用をしている数社に絞ったが、どこも不採用だった。

 「就職留年かな」と思っていた2018年11月、法事などで世話になっている寺の住職で、同こども園園長も務める菅原量さん(41)から、園の事務員を打診された。

 園のホームページの更新などを担当し、イベントを楽しむ子どもたちの撮影なども行っている。綜馬さんの机には1日のタイムスケジュールが張られ、忙しくなっても混乱しないよう工夫されている。それでもうまくいかないときもあるが「事務の先輩に追いつけるよう努力していきたい」と前向きだ。

 保育士の資格はないため、子どもと接する機会は限られているが、給食は小さな机を並べて一緒に食べている。子どもたちから「先生」と呼ばれている綜馬さん。「自分がこの職場で頑張ることで、少しでも障害者に対する差別や偏見がない社会になってくれれば」と話している。

 2018年度の障害者雇用実態調査によると、全国の民間企業で働く障害者は推計82万1千人で過去最多を更新。5年前に比べ19万人増えた。福井県内も、2632人(17年6月時点)で過去最多だった。

 仁愛大学人間生活学部子ども教育学科の石川昭義教授は「事務職とはいえ、保育現場での障害者雇用はあまり例がない」とした上で「障害者雇用は、インクルーシブ(分け隔てがない)社会を目指す一つの在り方。多様な人が暮らしていることや、その人に合わせた対応、配慮が必要なことを、子どもたちが生活の場面を通して、具体的に身に付けることができる」と指摘する。

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