【論説】古い街並みを生かしつつ新しい付加価値につなげるエリアリノベーション構想が進む越前市中心部にも、芸術の秋がやってきた。同市出身の絵本作家いわさきちひろ(1918~74年)の記念館がある市中心部南東エリアは同構想でアートゾーンの位置づけだ。10月に古い商店家屋をリノベーションし、アーティスト向けのワークスペースが核としてオープンする。新しい「芸術区画」誕生へ、鍵の一つは多くの人を巻き込む情報発信強化とみる。

 越前市のまちづくり会社「まちづくり武生」が推進する構想は、「ちひろの生まれた家記念館」のある天王町、神明町、タンス町のある本町などの周辺を「D-Artプロジェクトエリア」と位置づける。県外客も多い同記念館、1929(昭和4)年建築で美術展などの会場として使われる武生公会堂記念館(蓬莱町)、秋に越前指物協同組合の事務所が開所するタンス町(元町、本町)などを擁するエリアだ。

 ワークスペースは、明治期の建設と見られる古い商店家屋を、まちづくり武生が借り受けリノベーションする。

 同市では本年度から芸術家の宗田光一さん(64)が「地域おこし協力隊」を務める。熊本、栃木両県でまちづくりに携わった宗田さんが施設のプロデューサーとして関わり、オープニングイベントやそれに続く催しなどの構想も進む。

 まちづくり武生では、この施設を作品展示だけでなく、アーティスト向けワークショップの開催や作品の販売など、幅広く活用する方針を掲げる。さらにエリア内の空き家を利活用して、作家が短期間滞在して作品制作などを手掛ける「アーティストinレジデンス」を仕掛けていく構想も描く。

 タンス町の職人とも連動し、このエリアが「作家、作品に触れる場所」としてだけでなく「作家を育てる場所」「作品の生み出される場所」として成長すれば、ちひろや、絵本作家の故加古里子さんのふるさと・越前市らしい芸術区画が誕生する。飲食店などの出店が続く寺町通りを擁する「京町界隈(かいわい)」、家族連れらでにぎわうだるまちゃん広場のある「武生中央公園界隈」と、中心部全体の性格付けが見えてくる。

 市中心部の活性化はスピード感が大事だ。動きだした構想を勢いづかせていくために、熱量を持った人をどう集め、どう任せていくかが課題になる。面白いアイデアに携わりたいと思う人材は、きっといるはずだ。

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