【論説】横浜市で8月に開かれたアフリカ開発会議(TICAD)は、同会議で初めて民間企業を公式パートナーとして開催された。日本政府は官による援助から民間投資へとアフリカへの関与の軸足を移す姿勢を鮮明にし、会議では日アフリカの官民直接対話も行われた。

 アフリカ開発では、巨額融資を進める中国の存在感が大きい。中国と張り合おうとしても無理がある。だが、日本の民間だからこそ果たせる役割はあるはずだ。技術支援や人材育成、持続可能な都市づくりなどを進め、平和と安定の実現に向けて真に必要とされるパートナーを目指したい。

 アフリカは「最後の巨大市場」として注目される。今世紀半ばには人口が現在の約13億人から25億人となり、人類の4人に1人がアフリカ人となる時代が来る。IT普及などで経済成長が続く中、域内の経済統合も進み、今年5月にはアフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)の協定が発効した。ただ、成長の足掛かりが見えない国もあり、格差拡大が懸念されている。

 安倍晋三首相は、過去3年で200億ドル(約2兆1千億円)規模だった民間投資を、今後さらに拡大する努力を約束した。そこで求められるのは、なりふり構わず大規模事業を進め、一部の国で債務超過も起こしている中国とは一線を画した対応だ。

 例えば、今回のTICADで挙げられた日本の取り組みに「質の高いインフラ投資」がある。道路や空港に限らず、通信インフラ、郵便網整備などを視野に置いたものだ。また、産業や社会貢献では、水産資源利用強化や農業増産支援、これと連動した医療・衛生環境改善などが重要となる。

 今年はアフリカ南部や東部でサイクロンの被害が相次いでおり、防災技術支援も要望があるだろう。これら、きめ細かで目配りの利いた支援は日本の得意分野だ。政府は、治安などに不安を抱える民間企業がビジネス参加しやすくなるよう環境を整えるべきだ。

 TICADは日本が主導し、国連や、アフリカ連合(AU)などとの共催で1993年に始まった。冷戦後に主要国がアフリカ支援から手を引く中、日本が率先して貧困削減などを話し合うのが当初の目的だった。

 注意したいのは、アフリカ進出を日本の影響力誇示のためと捉えるべきでないこと。政府は、国連安全保障理事会の常任理事国入りなど、外交課題でアフリカ諸国の支持を取り付けたがっているとされる。

 そのような思惑は中国などに対するのと同様、アフリカ諸国の警戒を招くだろう。TICADの原点を忘れず地道な協力を重ね、安定に寄与することが結局は日本の信頼を高める道だ。

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