買い物かごを手にした住民が次々と訪れる大美商店の移動販売車=8月30日、福井県大野市朝日

 「毎度ありがとうございます。大美商店です」―。軽快な音楽とともに集落を回る精肉店の移動販売車が、福井県大野市和泉地区の住民の生活を支えている。肉に加え野菜や魚、調味料なども届けるのは、住民の強い要望を受けたもので同地区だけでのサービス。週1回の訪問は、独り暮らしのお年寄りの安否確認にもつながっている。

 この店は同市に本店を構える、1970年創業の大美商店。和泉地区では、40年以上前に移動販売を始めた。過疎と高齢化によって、ここ5年近くは食料品を扱う店がない状況が続き、住民の強い要望で3年前から肉以外も売るようになった。

 「運べる数は限られているので、お客さんが本当に欲しいものを届けたい」と同地区担当の次郎内昭さん(48)。週ごとに品ぞろえを変え、半夏生にはサバの丸焼きを売るなど季節感にも気を配る。

 販売日は金曜。8月30日午後3時ごろ、同地区朝日に小型トラックが姿を見せると、早速買い物袋を提げたお年寄りらが次々と寄って来た。車内には肉、カットフルーツ、刺し身、食パン、サラダ油などが所狭しと積み込まれている。買い物をする女性(79)は「しょっちゅうは市街地まで行けない。牛乳や豆腐など日常的に使う食材を届けてもらえてありがたい」と目を細める。

 同地区は住民の4割以上が65歳以上の高齢者。民家の前まで食材を運ぶ移動販売は、見守り役にもなる。市と見守り活動の協定を結び、独り暮らしの老人に積極的な声掛けをする。8月、市の補助を受けて地区内にコンビニがオープンしたとはいえ、移動販売車が築いたつながりは深く、住民の支持は変わらない。小林秀樹社長は「交通手段を持たないお年寄りから頼られている。お客さまがいる限り、続けていきたい」と力を込めた。

関連記事