米中の関税合戦がとどまるところを知らない。米国が対中追加関税第4弾に踏み切り、家電や衣料品、靴など中国からの輸入品約3200品目、1120億ドル(約12兆円)分に15%を課した。中国は大豆など農水産物や原油など米国からの輸入品約750億ドル分に5~10%の追加関税を課す報復措置の一部を発動した。

 米国はクリスマス商戦に配慮して一部を12月に回す方針で、実施されれば中国からの輸入品のほぼ全てに関税が課せられる。10月には1~3弾の制裁関税の税率を25%から30%に引き上げるとしている。中国は12月に自動車や部品にも高関税を課す方針だ。両国とも全輸入品への関税を課した後は関税率の引き上げという形で報復をエスカレートさせていく可能性が高い。

 トランプ米大統領は「貿易戦争は簡単に勝てる」などと強気の発言をしてきた。だが、中国にとって知的財産や産業補助金などの問題は国家の根幹に関わる譲れない一線であり、「貿易戦争にとことんつき合う」(商務省)構えだ。来年の大統領選に向けて成果を出したいトランプ氏には誤算だったのではないか。

 中国が米国の制裁関税発動を巡り世界貿易機関(WTO)への提訴を決定したことは、さらなる長期戦も辞さない意思表示だろう。我慢比べはトランプ氏に不利になるとの指摘がある。制裁関税は米国内の産業界から批判が上がっており、景況感の悪化も伝えられる。今のままではトランプ政権は貿易不均衡の是正や中国の構造改革も実現できないまま終わりかねない。

 中国も「トランプ後」を描いている節がある。だが、米国内の対中強硬派は先端科学技術や安全保障が絡む米中の覇権争いと位置づけ、こちらも持久戦の構えだ。中国では工場の国外移転が表面化、失業率増の懸念が拭えない。米中対立が関税以外の投資や為替といった分野に拡大し激化すれば、米中両国がともに一層の痛手を負うのは必至の情勢だ。

 経済大国1、2位の衝突は世界経済を揺さぶっている。日本企業にも波及しており、財務省法人企業統計では、今年4~6月期の4製造業の経常利益が前年同期比27・9%減とリーマン・ショック後以来、約10年ぶりの下落率となった。円高と株安のダブルパンチに見舞われ、これに消費税増税が重なることで景気の腰折れが危惧される。

 米中両国は世界への影響をできるだけ回避するためにも事態の打開に向けかじを切るべきだ。閣僚級の通商交渉を予定通り開催し折り合う道筋をつける必要がある。日欧も国連の場などを通じて働き掛けを強めたい。このままでは世界が泥沼に沈みかねない。

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