【論説】防衛省が公表した2020年度予算概算要求額の総額5兆3223億円は過去最大となる。第2次安倍政権の発足以降、8年連続の増加となる見通しだ。ただ、米軍再編関連経費などは金額が示されない「事項要求」としているため、さらに膨れ上がることになる。

 問題なのは、過去に契約した装備品のローン返済額に当たる「歳出化経費」が年々増え、20年度は19年度当初予算比で9・9%増の2兆1615億円に上ることだ。対日貿易赤字への批判を強めるトランプ米大統領を喜ばせるための装備品の爆買いが借金を膨らませ、今後も予算編成が硬直化する恐れは否めない。

 それでも安倍政権は米国から高額装備品を買い続ける意向のようだ。海上自衛隊の護衛艦「いずも」を改修し事実上、空母化。そこで運用する米国製戦闘機F35B6機の取得費846億円を計上している。政府は離島防衛や防空などを想定しているが、専守防衛に反するとの疑念は尽きない。

 地上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」は配備予定地の秋田、山口両県の理解が得られていないのに、垂直発射装置の取得などに122億円を計上した。特に秋田では防衛省のずさんな調査報告書に対する反対は根強く、参院選では配備反対を訴えた野党系候補が当選している。

 隊員不足も深刻化している。陸海空の定員は約24万7千人だが、現状は9割程度という。安倍晋三首相は自治体の協力が得られないなどと批判したが、人口減少や少子高齢化、人手不足の中で、どう人員を確保するかだ。防衛計画大綱でも「喫緊の課題」に挙げている。装備品をそろえても使う人材がいないのでは本末転倒だろう。

 にもかかわらず、宇宙の監視態勢を向上させようと「宇宙作戦隊」、電磁波を使って敵部隊の活動を妨害する「電子戦部隊」を設置するという。前者は米国が創設した「宇宙軍」に呼応するものだろうが、日本は何を担うのか、米国とどう連携するのかなど十分に検討する必要がある。

 岩屋毅防衛相は、厳しさを増す東アジアの安全保障環境に触れ「防衛力を着実に充実、強化していく」と強調する一方で、装備品調達などの一層の合理化に努める考えも示した。言葉通り、削るべきところは削り、必要なところに集める「選択と集中」を推し進めるべきだろう。

 防衛費を際限なく増やし続ける財政状況にないことは言うまでもない。政府は真に有効なものか、説明が欠かせない。国会の厳格な精査も必要だ。防衛力に比して求められるのは外交努力であり、その点も合わせてただすよう求めたい。

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