【論説】農林水産省が発表した2018年度の食料自給率(カロリーベース)は37%。前年度から1ポイント低下し、コメの記録的な凶作が起きた1993年度並みの過去最低水準となった。

 同省は対策として国内農業の生産振興、消費拡大を図るとしている。むろん、これらの政策は自給率にかかわらず取り組むべき農政上の重要課題である。

 ただ、果たしてそれだけで自給率の劇的改善につながるのか。自給率が問題になるのは食料安全保障の観点からである。これに本気で取り組むなら、通商政策なども含めた総合的な戦略が必要なはずだ。

 政府は2010年の「食料・農業・農村基本計画」では自給率目標を「20年度までに50%」としていた。しかし、15年改定の同計画では「25年度までに45%」に引き下げた。

 背景に自給率が上向かない現状がある。65年度に73%あった自給率はその後右肩下がりとなり、93年度に初めて40%を割り込んだ。最近は横ばいが続く。

 要因として、担い手不足をはじめとする農業の構造的問題に加え、食生活の変化がある。コメ離れや食の洋風化が進み、肉や乳製品などが海外からどんどん入ってきた。農業を時代に合った、足腰の強いものとするのは喫緊の課題だ。

 一方で、現在の自給率水準に食料安全保障上の不安がある以上、どんな政策で補うかも問題となる。具体的には輸入の安定を図るしかないが、例えば、73年には米国が大豆の禁輸措置を取り、日本で大豆不足が起きた。また農水省資料によると、世界的な食料危機が発生した07、08年には31カ国が輸出規制に踏み切っている。日本の食料輸入は今は安定しているとはいえ、気候変動が進む現在、いつ不安定要因に見舞われるか分からない。

 農産物は世界的に生産量全体の中で輸出に回される割合が低い傾向にある上、需給が逼迫(ひっぱく)すれば自国供給が優先されやすい。しかも日本は主要農産物輸入は米国頼みが顕著。18年の依存度は小麦51%、トウモロコシ92%、大豆72%で、16年と比べ小麦は5ポイント、トウモロコシは17ポイント依存度が高まった。大豆は横ばいだった。

 食料安全保障を図るにはリスクを分散し、多様な輸入先を確保しなければならないが、現状は逆行する。大枠合意した日米貿易協定は米国からの飼料用トウモロコシ輸入を一層増やす。飼料穀物輸入増は自給率を低下させるが、茂木敏充経済再生担当相は「米国農産品が日本で他の国に劣後しない状況を実現する」と話した。どこの国のための政策かと問いたくなる。

 食料供給に不安を持つ国民は77%に上る。安倍政権はこれにどう応えるのか。

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