【越山若水】「今の日韓関係は最悪とも言われるが、元徴用工や慰安婦問題は関係が成熟していく中での一つのプロセスとみています」。元駐韓国大使の小倉和夫さん(80)が新聞記者を前に講演で語った▼小倉さんによると日韓両国は、国民生活の豊かさを示す国連開発計画の「人間開発指数」では世界の中で同じレベルにありながら、日本が進んで韓国が遅れているという国民意識のずれがある。上下関係的な見方が問題を生む▼韓国政府は人権侵害に関する歴史の見直しを続けている。李氏朝鮮の甲午農民戦争(東学党の乱)や自国の民主化運動に関わった人の名誉回復も図っている。日本の植民地時代の問題もその一つ。日本が外交的に決着したと言っても韓国では政治問題として出てくる▼こうした点を踏まえ、両国関係の改善には時間という「調停者」が必要。両国がテーブルで向き合うのでなく同じ側に座り、観光など共通のテーマで話し合うことが糸口になると述べた▼小倉さんによると、1960年代の反日運動では韓国の日本大使館に銃弾が撃ち込まれた。やがて弾は石へ、石は卵になり、太鼓をたたき歌をうたう抗議に変化した。今は、日本製品の不買運動が起きている。国家間の政治的関係が悪化したからといって、国民同士がいがみ合うのは不幸だ。お互いを理解し合い、冷静な対応で成熟した関係への道を探りたい。

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