【論説】来年の今ごろ、首都圏では世界中の障害者アスリートが全身全霊を傾け熱戦を展開。手に汗握る白熱の戦いに国内外からやって来た観客が大声援を送る…。そんな活気あふれるシーンが繰り広げられているに違いない。

 東京パラリンピック(2020年8月25日~9月6日)が開幕まで既に1年を切っている。今大会はバドミントンとテコンドーを新たに加え、22競技540種目が実施される。参加選手は約160カ国・地域から史上最多の約4400人に達する見通しだ。

 約1カ月前に東京五輪が先行して開かれるため、その余韻が冷めやらぬ中、日本列島が感動と興奮の渦に包まれることを期待したい。

 ■会場「満席」目指す■

 障害者スポーツにパラリンピックの名前が最初に使われたのは1964年の東京大会だった。2回目の今回、日本パラリンピック委員会(JPC)は過去最多の22個の金メダルを想定、世界ランク7位を目標に定めた。日本勢の活躍と相まって、会場が観客でにぎわう「フルスタジアム(満席)」を目指している。

 選手を取り巻く環境改善としては、強化のための拠点施設が整備された。東京都内の五輪選手用のナショナルトレーニングセンター(NTC)のすぐ近くに、完全バリアフリーのNTC拡充棟が完成。建設費約194億円で、練習と宿泊が可能な建物である。

 観戦に訪れる障害者のスムーズな移動のため、都は一定規模以上のホテルや旅館が新築または増改築する場合、段差をなくすよう求めるバリアフリー条例を改正。また競技会場では車いす席を総観客席数の1%以上確保した。

 ■高関心も一過性懸念■

 パラ大会を契機に、障害者を支援する動きは前進している。では、国民の関心と理解は高まっているだろうか。

 NHK放送文化研究所の18年調査では「関心あり」と答えたのは61%だった。ただ大会の視聴は「関心のある競技に絞る」「結果が分かればよいので少しだけ」の選択視聴派が合計64%で、毎日視聴派の23%を圧倒した。

 共同通信の障害者アンケートでは「東京パラ大会が障害の理解につながる」と期待する意見は62%に達した。理由は「普段は意識しない障害への関心が高まる」「メディアを通じて障害者を目にする機会が増える」などだった。

 反対に「理解につながると思わない」とする見方は38%。「一時的な盛り上がりに終わり関心が続かない」「日常的に障害者と接する機会がないと理解は生まれない」などを理由に挙げ、一過性に対する懸念を示した。

 ■障スポ福井の教訓■

 規模は格段の差があるが、福井県は昨秋「福井しあわせ元気国体」「同元気大会(全国障害者スポーツ大会=障スポ)」を連続で開催した実績がある。このとき本来の競技運営や接遇とともに、理念に掲げたのは国体と障スポの融合、障害の有無に関係なく互いに尊重し合って暮らす「共生社会」の実現だった。

 県は大会を後押しする共生社会条例と手話言語条例を制定。また国体期間中に車いすテニスなどを開催する前例のない試みにも挑戦した。

 パラリンピックは今や大規模で華やかな大会になった。ただ開催意義には競技五輪と違い、障害者の偏見や差別をなくすことも含まれる。東京大会が「共生社会」定着の促進剤となるよう願っている。

 最後に、障スポ福井で精神障害者バレーボールをサポートした女性が報告書に記した言葉を紹介する。

 「自分が受け入れる姿勢を見せると、相手も心を開いてくれる」「誰かのために応援しサポートすることで『しあわせな気持ちを抱き元気になれる』。素晴らしいことだと思いました」

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