【論説】就職情報サイト「リクナビ」が就職活動中の学生の内定辞退率を算出しデータを企業に販売していた問題で、政府の個人情報保護委員会が同保護法違反と断じ、サイトを運営するリクルートキャリア(東京)に組織体制などの是正を求める勧告を出した。

 リクナビには約3万社以上が掲載されており、約80万人の学生が登録し企業情報の閲覧、エントリーシートの提出、説明会などへの申し込みなどで利用している。リクナビでしか応募できない企業もあるという。県内の学生や県出身の学生らの利用も相当数に上るとみられる。

 リクルートキャリアはサイト内の学生の閲覧履歴や志望動機などを基に、人工知能(AI)を使って個々の学生が内定を辞退する確率を算出していた。当初、学生の同意を得ていたとしたが、約8千人分は同意がなかったことが判明。さらに約7万5千人に関しても十分な説明をしていないなど、ずさんな運営だった。就活サイト最大手だけに社会的影響は大きく、個人情報保護委員会の是正勧告は当然といえる。

 問題は同委員会が「学生の人生を左右し得る」と指摘した点だ。リクルートキャリア側は採用の合否にはデータを活用しないことを販売先企業と同意書で確認していたとしているが、採用の現場でどこまで厳格に守られていたか。企業は内定辞退者が出ると採用計画に狂いが出るため、辞退しそうな学生を引き留めるというのが売りだった。

 ただ、価格は400万~500万円という。引き留めるためだけに、そうした費用をかけるとも思えない。自分のどんなデータがAIでどう判定されたのか、就職希望先の企業に流れ合否に使われることはなかったのか―学生のこうした不安に対し、リクルートキャリアは説明責任を果たしているとは言い難い。人生を左右したケースはなかったのかを含め、全容を早急に明らかにすべきだ。

 内定辞退率予測を購入していたのはトヨタ自動車、ホンダ、りそなホールディングス、三菱電機など名だたる企業だ。購入企業も応募学生の情報をリクルートキャリア側に提供していたとされ、責任の一端は免れないだろう。学生は購入企業への不信感も募らせているはずであり、詳細を公表する必要がある。

 個人データの活用は巨大IT企業だけでなく、市場リサーチや営業戦略などあらゆる分野で欠かせないものになっている。一方で、他人に知られたくないプライバシー情報が含まれる。使い方を誤ると、多方面に不利益を生じさせる恐れがあるだけに、活用には高い倫理規範や厳格な方針が欠かせない。

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