【論説】小浜市東部にある内外海地区はリアス海岸の変化に富んだ景色が美しい。その一つ、矢代海岸では矢代観光協会(会員8軒)が中心になり、景観美と海上スポーツを組み合わせた新たな観光客誘致に乗り出した。個人客を対象に魅力を発信し、地道にファンを増やす挑戦を応援したい。

 かつては多くの海水浴客でにぎわっていたが、近年はアクセスがよくなる一方で日帰り客が増え、民宿の宿泊客が減少。経営者の高齢化も進み、営業を続ける民宿はわずか4軒になり、対策を模索していた。

 目を向けたのは身近な風景。「地元では、普段目にしている当たり前の風景。これまできれいという認識がなかった」と同協会の栗駒正一会長は話す。しかし「美しい」「癒やされる」と感動する観光客から目の前の風景が“宝”だと気づかされ、誇りを抱いた。

 ネコや人面に見えたり赤白のコントラストが鮮やかに映ったりする岩の数々、「獅子が落ちる」というほど急傾斜の岩でできた洞窟など海の景色は個性的だ。ネコ岩やモアイ岩、赤白岩、獅子落とし洞窟…。それらの奇岩や洞窟に約3年前から遊び心で愛称を付け、美しさをPRしている。

 漁船などでしか行けず、“プライベートビーチ”気分を味わえる場所もある。ここをより楽しんでもらうツールとして、若者らに人気の海上スポーツ「スタンドアップパドルボード(SUP=サップ)」に着目した。サーフボードの上に立ち、奇岩を眺めながらパドルでこぎ進む海上散歩を初心者も楽しめる。市の補助を受けてボードを購入するなど4台を矢代観光協会が管理。体験ツアー、スクールを開催する若狭町のサーフショップ「ホットスタイル小浜店」と連携、観光客を受け入れている。

 今春以降、ホッケーの実業団女子選手らがオフに訪れるなど、小グループ中心に約60人がSUPを体験。「まだ利益が出るまでに至っていない」(栗駒会長)が、徐々に認知度を高めながら受け入れ態勢の充実を図っている。

 インストラクター育成については、年配者が多い地元住民には壁が高く、愛好者らを巻き込みたい。授業の一環で野外調査に訪れる県立大小浜キャンパスの学生との連携も望まれる。学生たちは地元の支援を受けながら調査活動を行い、矢代をよく理解している。魅力を発信する役割を担ってほしいところだ。

 海水浴客に代わる宿泊客を増やす。その目標へ向けさまざまな方策を考えながら一歩ずつ前に進みたい。

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