【越山若水】記録的大雨が日本列島を襲う。九州北部の大雨では、川からあふれた濁水が町に流入。車や建物をのみ込んだ。まるで15年前の福井豪雨を再現したような光景だ▼人間生活を脅かすこうした天災は、古今東西たびたび繰り返されてきた。古代エジプトにおける文明と気候変動の関係や水辺の暮らしを探る展覧会が、9月30日まで若狭町の県年縞博物館と若狭三方縄文博物館で開かれている▼「エジプトはナイルの賜物(たまもの)」とギリシャの歴史家ヘロドトスが記したように、ナイル川の氾濫によって下流域に運ばれた肥沃(ひよく)な土砂で穀物が育ち、壮大な文明が築かれた。洪水の規則性を理解するため天文学を発達させ、暦が作られた▼ただ、気候は常に一定でなく文明化の歩みは、ナイル川の水量が少なく乾燥した気候の下で進行していた。エジプト文明の誕生は強力なリーダーシップを持った支配層の下、宗教儀礼によって気候にあらがい共同体の結びつきを強めた結果達成された。「厳しい環境だからこそ集団を大きくし、気候に負けない社会をつくろうというモチベーションが高まった」と、年縞博物館の長屋憲慶(かずよし)学芸員は語る▼現代社会においても自然災害による被害の一方、災害と向き合って多様な防災対策が講じられてきた。災害が現代文明を衰退させることなく、持続可能で新たな発展の契機となるよう、英知を結集したい。

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