【論説】「強い結束と前向きな討議が行われたことを強調したい」。先進7カ国首脳会議(G7サミット)の議長国フランスのマクロン大統領がまとめた合意文書の前文にはこう書かれている。合意文書とはいえ、従来の首脳宣言と異なり採択もなされていない。わずか1ページという物足りなさは、G7が国際社会をリードできない現実を象徴している。「強い結束」に疑問符が付いたと言わざるを得ない。

 マクロン氏は「自国第一」を掲げるトランプ米大統領を刺激しないよう、開催前から首脳宣言のとりまとめに白旗を揚げていた。本来なら、世界経済を揺るがす米中貿易摩擦が最大のテーマだったはずだ。各国から懸念が噴出したが、トランプ氏に直接、意見するシーンはなかったという。

 トランプ氏にもの申すことで、逆ににらまれ貿易などで不利な局面に立たされることを恐れたのだろう。欧州勢も自動車への報復関税などを警戒し、及び腰だった。安倍晋三首相も「自由貿易の重要性」や「世界貿易機関(WTO)改革」を主張し、関税合戦を遠回しにけん制しただけ。各国は経済の下振れリスクに結束して協調していくことで一致したものの、震源地である米国に翻意を迫れないようではG7の存在意義が問われかねない。

 G7が世界経済に占める割合は1990年代に7割近くあったものが、今では4割台に落ち込んだ。中国やインドなど新興国を入れたG20は8割近い。世界2位の経済大国となった中国の不在など、G7が世界経済の問題解決に資する力は期待できないのが現状だ。

 イラン問題では、マクロン氏がイランのザリフ外相を招くサプライズを演出し、米イラン首脳会談が「近く実現するよう望む」と述べた。共同記者会見に同席したトランプ氏は「環境が整えば首脳会談は可能」と前向きな発言をした一方で、「(イランは)振る舞いを良くする必要がある」と挑発行動を控えることが会談への条件だと強調。議論は平行線のままというのが実態だろう。

 保護貿易主義やイラン核合意離脱に加え、温暖化防止のパリ協定の離脱など、トランプ氏は先進国が共有する価値観をことごとく崩してきた。サミットへの出席を「生産的な時間の使い方ではない」とも述べている。トランプ氏批判を強めれば、サミット自体が決裂する恐れもあったという。

 国際協調の軽視という流れを止めるためにも、サミットは人権や自由、民主主義などの原則にこだわるべきではないか。ただ、来年はトランプ氏を議長とする米国での開催だ。大統領選を目前にした時期であり、今回以上に試練の時となるのは確実だろう。

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