【越山若水】「お化け博士」といわれた哲学者で東洋大の創立者・井上円了はことし没後100周年を迎えた。「知と行動の巨人」とも呼ばれるその業績に再び光が当たっている▼円了の妖怪学は明治時代の民衆にはびこっていた迷信を退治するのが狙いだった。「こっくりさん」の謎も科学的に解明した。生涯3度の海外視察を経験。その成果や哲学を伝え、大学への寄付を募るため全国で講演した▼1890(明治23)年から27年間で約5400回講演し、開催地は現在の市町村の半数以上にのぼった。鉄道も道路も発達していない時代に驚くべき数字だ。福井県には1902年に訪れた。8月13日付の福井新聞に「越前の七不思議」と題した文章を寄稿している▼不思議の一つに挙げたのが、糸生村(現越前町)の浄勝寺所蔵の経典「黄檗版一切経(おうばくばんいっさいきょう)」だ。江戸後期の学僧で、住職だった上野丹山(たんざん)が校訂を手がけた。朝鮮半島で編さんされた経典と一字一句比較し誤脱を正し、経典の精度を高めた。1521冊の校訂に11年をかけた。円了は「驚くべき大事業。今の人ではとてもできない」と記した。県有形文化財に指定されているが、本年度から再調査が始まる▼120周年の創刊記念日を迎えた福井新聞には、こうした知の巨人の業績や貴重な文化遺産の情報が蓄積されている。これからも、未来の読者にも役立つ情報をお届けします。

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