【越山若水】年配の方なら「三木鶏郎」と聞いて、戦後の人気のラジオ番組を手がけた放送作家としてご記憶だろう。多くのCMソングを世に送り出した音楽家でもあり、名前は広く知られている▼中でも替え歌の出来栄えは秀逸で、あるときはユーモアたっぷりに世相を笑い、時事ネタでは痛烈な風刺を込めて相手を皮肉った。例を挙げれば、国会議員を巻き込んだ贈収賄事件・造船疑獄が発覚した1954年。童謡「ヒライタ、ヒライタ」の歌詞をこう変えた▼♪とらえた とらえた 何の罪でとーらえた 汚職の罪でとーらえた とらえたと思ったら いつのまーにか ウーヤムヤ♪ 司直の手が佐藤栄作・自由党幹事長に伸びて指揮権が発動されたとき、この歌がNHKラジオから流れ、吉田茂首相の逆鱗(げきりん)に触れたという▼そんな三木に童謡「あの町この町」の替え歌がある。♪あの税 この税 目がまわる 目がまわる いま カネないです 帰りゃんせ 帰りゃんせ♪ 言わずもがな、過重な税金に首が回らない庶民の嘆きを代弁している(池内紀著「戦争よりも本がいい」講談社)▼消費税の10%導入まであと1カ月余り。小売業者は増税前購入を呼びかけるが、消費者の意欲はさほど高くない。それもそのはず、6月の名目賃金は増加しても、実質賃金は逆に目減りしている。本番で目が回らぬよう、庶民は今から耐えている。

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