【論説】持続可能な社会へ向け、人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット)を活用する動きが広がっている。県内では昨秋、県が「ふくいAI・ビジネスオープンラボ」を開設。福井工大は今春「AI&IoTセンター」を設立した。導入にはまだ慎重な企業が多いが関心は高まっている。今後、産学官の連携を強化し、時代のニーズに対応できる人材育成を図る必要がある。

 人口減少の波が押し寄せている。福井県の人口は2000年の約83万人をピークに減り続け、国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、40年には64万7千人になる。生産年齢人口(15~64歳)は33万人と、全体のほぼ半数に落ち込む。人手不足の中で産業や暮らしを維持するには、AIなどによる効率化や省力化が欠かせない。

 ■費用対効果の壁■

 県内企業のAIとIoTの導入状況について、県が17、18年に各千社を対象に行ったアンケート(回答率約4割)によると、「導入済み」はAIが0・5%、IoTが8・2%と、まだ一部にとどまる。これに対し「関心あり」としたのは、AIが70・6%、IoTが77・3%と高く、全国平均を若干上回っている。

 関心度は高いが導入に踏み切れない理由としては▽メリット、費用対効果が不明(5割)▽必要となる機器、システムが不明(4割)▽活用するための人材不足(3割)―などが多かった。

 こうした状況も踏まえ、「ふくいAIラボ」では、AI・IoT技術の展示や機材見学会、セミナーの開催、専門家による相談対応などに当たっている。また県は、導入促進のための補助金制度を設けている。ITコーディネーターら専門家を企業に派遣し、現場で使いこなせる社内人材育成の研修も実施する計画だ。導入に慎重な企業は、こうした制度や機会を生かしたい。

 ■地域の課題解決■

 一方、福井工大の「AI&IoTセンター」は、研究者9人と事務局1人の10人体制でスタートした。独自に運用開始予定の超小型人工衛星のほか、同大で進めているドローン運用やツイッター解析などの研究を通じて蓄積したオンリーワンのデータ収集・分析技術を活用。同大で推進する環境IoTや県のオープンデータ、企業のビッグデータと掛け合わせ、AIによる解析を加えて新たなサービス、価値の創造に結びつける構想だ。

 具体的には▽稲の生育判断や土砂崩れ認識▽積雪具合の認識による除雪の優先判断▽雨水利活用による給水システム構築と災害緩和▽電子カルテなどの分析による病名推定▽消費者の潜在ニーズの発掘によるマーケティングへの応用―などを想定している。

 芥子(けし)育雄センター長は「県内企業や自治体のニーズに合わせ、専門研究者が共同で研究を行い、地域の課題解決や産業創出を図りたい」と抱負を語る。

 ■新たな価値創造■

 「地域が、AIやビッグデータなどの『文明』を使って地域固有の『文化』にできるかどうかが、これからの地域産業・企業の発展の決め手になる」と、県立大地域経済研究所の南保勝所長は指摘する。しかし、経済規模(域内総生産)が全国の0・6%程度の福井県にとって、新たな価値の創造は容易ではない。

 そこで、官民や民民、地域・産業間など多様な連携が必要になると南保所長。例えば、県や県内企業が20年度に打ち上げを予定する超小型人工衛星「県民衛星」の衛星画像を用いたビジネス創出や大学との共同研究なども考えられよう。

 福井経済の発展を支えてきた「勤勉」や「(企業や家庭間の)絆」に、多様な「連携」を加えた新たな「福井モデル」を創造したい。

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