【論説】日韓の対立はどこまで深刻化するのか。韓国政府が日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を決定、通告したことで、関係悪化は通商分野から安全保障分野にまで広がった。喜ぶのはミサイル発射を繰り返す北朝鮮とその後ろ盾となる中国、ロシアであり、北東アジアの安全保障に悪影響を与えかねない。韓国政府には事態を冷静に捉え、再考するよう求めたい。

 GSOMIAは互いに軍事上の機密情報を提供し合い、その際に第三国への漏えいを防ぐために結ぶ協定で、米国の要請を受け2016年に日韓で締結した。北朝鮮が弾道ミサイルの発射を繰り返す中で、これまでに29回の情報交換がなされたという。日本の偵察衛星情報などが直接得られなくなることで、韓国軍に痛手になるとの指摘がある。

 韓国大統領府は破棄の理由について、日本の対韓輸出規制強化が「両国間の安保協力環境に重大な変化をもたらした」と指摘。協定維持が「韓国の国益にそぐわない」としている。だが、その判断は早計であり、協定で得られる国益を自ら手放すものではないか。

 さらに、大統領府関係者は、日本の植民地支配からの解放を記念する「光復節」の演説で、文在寅(ムンジェイン)大統領が「日本が対話と協力の道へ向かうなら、われわれは喜んで手を結ぶ」などと呼び掛けたのに、日本側から何の反応もなかったことを挙げている。日本政府は元徴用工問題などで韓国側にボールがあるとしてきた。文氏の演説はそれを逆手にとるものであり、相手に責任を押しつけるだけでは、何ら解決にはつながらない。

 米韓関係の悪化も懸念される。韓国側は事前に米側に協定破棄を伝え、「米国は韓国の立場に理解を示していた」と主張した。だが、破棄を受け「強い懸念を表明する」(米国防総省)、「失望している」(ポンペオ国務長官)などと批判の声が上がる。

 そうしたリスクを取ってまで、文氏は協定の破棄に踏み込んだのは、米中貿易摩擦の影響で貿易が落ち込むなど経済の失政を覆い隠すために「反日世論」をあおり、支持率につなげようとの思惑が透ける。来年4月の総選挙をにらんでのことなら「自分第一」の極みではないか。

 安倍晋三首相も参院選直前に輸出規制を表明するなど選挙に利用した節がある。発端は元徴用工判決による日本企業の実害を防ぐための措置だったが、関係悪化で韓国内では日本製品の不買運動が広がり、韓国からの訪日旅行者数も落ち込み、閑古鳥の鳴く観光地も出て始めている。

 負の連鎖を断ち切るためには首脳同士が事態の打開を図る以外にない。対話への道を探るべき時だ。

関連記事