【越山若水】「呉越同舟」は中国の著名な兵法書「孫子」が出典のことわざである。反目し合う敵国同士でも、同乗する船が嵐に襲われたら協力して難局を乗り越えるものと、団結の大切さを説く▼格言の背景にあるのが、紀元前500年ごろに起きた「呉越の戦い」である。呉と越は揚子江流域にある新興国で不倶戴天(ふぐたいてん)のライバル。数十年にわたって激烈な戦いを繰り広げた。戦史をたどると復讐(ふくしゅう)に次ぐ復讐、陰謀や裏切りなどまさに恨みつらみの連続である▼例えば、呉王・夫差(ふさ)は父の仇(あだ)を討つため薪(たきぎ)の中で寝起きし、辛苦に耐えながら越王・勾践(こうせん)を降伏させた。一方、助命を嘆願した勾践は国に戻り、恥辱を忘れないよう獣の肝を嘗(な)めて夫差への報復を成し遂げた。そこから「臥薪嘗胆(がしんしょうたん)」の故事成語が生まれたという▼日本と韓国の対立が泥沼化している。韓国が日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を決定した。日本が韓国を輸出管理の優遇国・ホワイト国から除外したことの対抗措置だ。もちろん日本には、元徴用工問題やレーダー照射事件などで言い分はある▼いわば双方が意地の張り合いで自国の正義を振り回し、一線を越えてしまった格好だ。米国は北東アジアの安定に強い懸念を表明している。ちなみに「呉越の戦い」では、どちらも一時は強国になるが疲弊の果てに栄華は長続きしなかったという。

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