「ラリー・チリ」のWRC2で勝利し、喜ぶ勝田(右から2人目)(C)TOYOTA GAZOO Racing

 8月14日、テニス界で番狂わせが起きた。

 米・シンシナティで行われたテニスの「ウエスタン・アンド・サザン・オープン」男子シングルス2回戦。第6シード錦織圭(日清食品)が、同じ日本人の西岡良仁(ミキハウス)に6―7、4―6でストレート負けしたのだ。当時の世界ランキングは、錦織の5位に対して、西岡は77位。23歳の西岡にとって、世界ランキングのトップ10から挙げた初白星は、「自分にとってのヒーロー」と尊敬する29歳の錦織からと二重で記念すべきものとなった。

 錦織は体調不良だったという。確かにプレーは精彩を欠いていた。とはいえ、そのことでこの勝利の価値が下がることはない。第1セットは5―3から錦織に3ゲームを連取されたが押し切られなかった。タイブレークに持ち込むと、6連続得点でこのセットをもぎ取ってみせるなど、見事な戦いを披露したからだ。

 西岡はまだ、23歳。今後、さらなる飛躍が予想される。だが、日本には他にも期待の若手選手がいる。代表格は、今年のウィンブルドン・ジュニア選手権男子シングルスで日本勢では初めて四大大会同種目を制覇する快挙を成し遂げた16歳の望月慎太郎と、現在21歳で2016年には世界ジュニアランキングで2位を記録した綿貫陽介(日清食品)だろう。彼らは近い将来、間違いなく注目を集めることだろう。

 このように若手が着々と育っている日本のテニス界。実は、モータースポーツの世界でも注目株がいよいよ世界最高峰クラスへ挑戦する。それが8月22日開幕の世界ラリー選手権(WRC)第10戦「ラリー・ドイチェランド」で、トヨタからWRCデビューを果たす勝田貴元だ。

 26歳の勝田はTOYOTA GAZOO Racingラリーチャレンジプログラムの育成ドライバー。今シーズンはWRCの下位クラスに位置するWRC2を主戦場に活動している。

 「勝田」という名前を目にして、「ラリーの世界で昔、名前を聞いたような…」と思った方はかなりのモータースポーツ好きに違いない。父親の勝田範彦は過去8度全日本ラリー選手権を制覇し今も日本ラリー界を代表するトップドライバーとして活動している。これだけでもすごいが、祖父の勝田照夫は初代の全日本ラリー選手権王者であり、WRCにも出場した経験を持つ。世界でも珍しい3代続くラリー・ドライバー一家なのだ。

 そんな期待のサラブレッドがいよいよラリーにおける世界最高峰の舞台にデビューする。勝田貴元は、WRC2では18年の「ラリー・スウェーデン」で同クラスとして日本人初となる優勝を飾る。今季も5月に「ラリー・チリ」を制しており、来年にもWRCデビューを果たすのでは? と言われていた逸材だ。それがデビュー時期を早め、「ラリー・ドイツ」、そして10月24〜27日開催の「ラリー・スペイン」にスポット参戦することが決定した。この2戦で十分な走りを見せれば、20年には日本人初のWRCフル参戦ドライバーが誕生することだろう。

 西岡や望月などが新戦力が現れてきたテニス界と同様、モータースポーツの世界でも若い才能が台頭してきた。WRCでは勝田貴元であり、F1では現在F2クラスを戦うホンダドライバーの松下信治だ。くしくもこの2人は共に1993年生まれ。ラリーとF1、舞台こそ違うが共に世界最高峰クラスのレギュラードライバーとしてステップアップを果たし、来年は東京オリンピックだけでなく、モータースポーツにも大いなる注目を集めてほしいものだ。

 まずは、一足先に最高峰クラスに到達した勝田貴元のWRC挑戦を応援したい。(モータースポーツジャーナリスト・田口浩次)

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