【論説】漫画家でイラストレーターのヒサクニヒコさん(75)=横浜市=の原画展「わくわくきょうりゅう探検隊」(福井新聞社共催)が9月4日まで、鯖江市まなべの館で開かれている。恐竜を題材にした絵本の原画約150点を展示している。愛らしく夢あふれる作品群は見て楽しめるのはもちろん、恐竜研究家としても名高いヒサさんが手掛けただけに、科学的な考察に基づいており、示唆に富む。大人も子どもも、恐竜が地球上で生きていた事実に思いをはせ、環境問題などに考えを広げる入り口になる展示会だ。

 ■研究を踏まえて■

 原画は恐竜の成長を描く絵本「きょうりゅうぺぺのぼうけん」の約100点と、児童向け絵本「恐竜研究室」の約50点。「ぺぺのぼうけん」は恐竜「ぺぺ」が誕生し、親やきょうだいと暮らしながら、たくましく育っていく物語だ。

 展示会初日の8月3日、ヒサさんのトークイベントがあった。「人類は誰も恐竜を見たことがない」とヒサさん。恐竜は約6550万年前に絶滅し、新人類は約20万年前に誕生したといわれているからだ。それでも現在、世界中の人たちが恐竜をイメージすることができる。化石が発見され、研究が進んだためだ。

 例えば全身骨格の化石によって恐竜の姿形が分かり、足跡の化石で歩幅や歩き方が判明した。赤ちゃんの化石の状態から、親が巣に餌を運び、子育てをしていたらしいことも分かったという。「ぺぺのぼうけん」には、こうした知見を踏まえた表現が随所に見られる。かつて国内で恐竜の研究が進んでいないころから興味を持ち、海外にも足を運んで調べてきたヒサさんだからこそ描けた作品だろう。

 ■謎がいっぱい■

 ヒサさんによれば、恐竜にはまだ分からないことが多くある。なぜ絶滅したのか、も謎だ。巨大な隕石(いんせき)が地球にぶつかった、大規模な噴火があった、など説はいろいろある。だが何らかの環境変化が起きたとして、なぜ恐竜は滅び、他の哺乳類や爬虫(はちゅう)類や鳥類などは生き残ったのか、は説明できていないという。

 いずれにせよ恐竜は姿を消し、今の地球では人間がわが物顔で暮らしている。ヒサさんは「他の生物が長い年月をかけて体を変化させ、環境に適応してきたのと違い、人間は外部のエネルギーを利用して地球のあらゆる所へ進出してきた」と指摘した。チーターのように速く走れなくても自動車を、鳥のように飛べなくても飛行機を発明してきたというわけだ。

 ■地球の大先輩■

 人間は頭を使い、社会を豊かにしてきた。一方で地球環境を壊してきたのも事実だ。恐竜が滅びたように、今いる人間や動物がいつか滅びる日が来るかもしれない。ヒサさんは展示の中で「滅びる原因が人間のせいにならないよう、みんなで自然を考えてもらいたい」と呼び掛けている。

 ヒサさんの原画は、恐竜が別世界の怪獣のような生き物ではなく、われわれと同じように、この星で暮らしを営んでいた存在であることを伝えてくれる。ヒサさんの言葉を借りれば「地球の大先輩」だ。恐竜の盛衰に思いを巡らせることは、私たちの振る舞いを見直すことにつながる。夏の一日、展示会に足を運び、そんなことを考えてみてはいかがだろう。

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