【論説】福井県池田町の部子川をダムサイトとする足羽川ダムの事業費(1期工事)が当初計画の960億円から340億円増額し、1300億円になる見通しとなった。大幅増だが、福井市などの下流域住民にとって必要な事業だけに、8月末の来年度政府予算概算要求で膨らんだ事業費の計上方針をしっかり示すべきだろう。

 「ゲリラ豪雨」といった異常気象が全国で起きている。福井豪雨級の再来もあり得る以上、ダムの完成を急ぐ必要がある。

 国直轄事業の足羽川ダムを巡っては1967年に予備調査が始まった。水没戸数が多い美山町(現福井市)での建設計画は97年、反対運動で事実上白紙になった。2002年、国が部子川に造る代替案を提示。04年の福井豪雨を受け、池田町が“苦渋の選択”で受け入れを表明した。

 足羽川ダムは足羽川はもちろん、日野川、九頭竜川の下流域の洪水被害軽減も目的で、26年度の完成を目指す。高さ96メートル、幅351メートル。普段はゲートを開けて非常時のみ貯水する「穴あきダム」となる。

 1期工事では水海川とダムをつなぐ導水路も整備する計画で貯水量は2870万トン。治水ダムとしては県内では最大だ。完成すると福井豪雨で破堤した足羽川堤防地点の水位を90センチ下げられる。

 ただ、なぜ事業費が大幅に膨らんだのか。近畿地方整備局の同ダム工事事務所は工事単価や人件費増、消費税増税などを理由に挙げる。そもそも事業費は06年度の物価や人件費を基に算出した。20年度からいよいよ本体工事に着手するため、現地での詳細な地質調査で判明した条件など新たな事業費を出した。

 その結果、物価や人件費の増額といった社会的要因で187億円増、洪水調節機能や安全性を確保するための追加対策費で180億円増と見通す。一方でコスト縮減にも取り組み、洪水時にダム本体へ水を流す導水トンネルの直径の縮小化などで27億円減とし、結局計340億円増額となった。今後は完成が遅れないための対策も含め、事業工程に影響が出ないよう配慮しなくてはならない。

 大型公共工事では、北陸新幹線金沢―敦賀間でも建設費が高騰した。資材価格や人件費増、工法の見直しなどで2263億円膨らみ、建設費は1兆4千億円を超えた。国費増などで手当てされるが、福井県の追加負担が生じた。

 足羽川ダムの事業費増でも県の負担が生まれる。社会的要因の増額はやむを得ない側面はある。ただ、国は今後具体的な設計が進む中で、さまざまな代替案と比較しながら、できる限りのコスト縮減管理を進めるべきだろう。

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