脳出血を起こして重度の障害者となってしまった56歳男性の友人ミノリさん(左)が、彼の無念さを思い、会社にも社会にも居場所を失ってしまった顛末を語ってくれた(筆者撮影)
現代の日本は、非正規雇用の拡大により、所得格差が急速に広がっている。そこにあるのは、いったん貧困のワナに陥ると抜け出すことが困難な「貧困強制社会」である。本連載では「ボクらの貧困」、つまり男性の貧困の個別ケースにフォーカスしてリポートしていく。
今回紹介するのは「以前より、この記事に取材していただいたら?と提案していた友人が、昨年12月に貧困とパワハラの果てに脳出血を発症して重度の障害者となってしまいました」と、友人の女性が編集部にメールをくれた、56歳の男性だ。

こわばった右手を、一回り小さな掌が包み込む。むくんだ指を1本1本もみほぐしていく。都内の、あるリハビリ病院の一室。右手の主である男性が「あーっ!」と声を上げると、マッサージをしている女性が「痛かった? ごめんね」と語りかける。

親しげな2人の様子は、父娘にも、恋人同士にも見えた。

会社にも社会にも居場所を失った

「友人が昨年12月、貧困とパワハラの果てに脳出血を起こして重度の障害者になってしまいました」

 

編集部にこんなメールをくれたのは、会社員のミノリさん(39歳、仮名)。20年来の友人で、IT関連会社のシステムエンジニアだったマキオさん(56歳、仮名)は脳出血により、右半身麻痺や失語症などの後遺症が残り、今も会話が難しい状態だという。大病を患った友人が会社にも、社会にも居場所を失った顛末を、ミノリさんが代わって語ってくれた。

「理不尽だ。労働組合なんて、組合費だけ取って、何にもしてくれない」

いつもミノリさんの愚痴を聞いてくれるマキオさんが、仕事への不満を口にするようになったのは、2005年頃。関連子会社への一方的な転籍を命じられたことがきっかけだった。これにより、月数回の夜勤など業務内容は変わらないのに、600万円ほどあった年収は50万円以上ダウンしたという。

長引く不況の影響もあったのか、転籍後も、収入は右肩下がりの一途。そして、マキオさんは40代半ばで大動脈解離を発症する。さいわい、2カ月足らずで職場復帰できたものの、50歳を過ぎたとき、1度目の脳出血に見舞われた。このときは目立った後遺症はなかったが、会社側の産業医の復職許可が下りず、1年間の休職を余儀なくされたという。

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