甲子園球場で行われた第101回全国高校野球選手権大会の開会式=8月6日

 毎年夏、甲子園球場を訪れることにしている。

 取材ではない。切符を買って、高校野球を家族と見るのが恒例行事になっている。

 ここ数年でも、甲子園の変化を感じる。

 阪神電車の甲子園駅は整備が進み、使い勝手が良くなっている。

 駅の改札を出ると右手に大型のスターバックスの店舗ができていて、店内には虎の絵が何点かかかっていた。いかにもタイガースの本拠地らしい演出である。

 球場までの数百メートル、球場から聞こえてくるブラスバンドの音、観客の歓声は変わることはない。

 球場のゲートにたどり着くまでのわずかな間に胸が高鳴ってくる。

 ただし、無料だった外野席が有料になったことで、気軽に見に行ける場所ではなくなったのはとても残念である。

 夏休みの練習帰りなのだろう、ユニホーム姿の小学生たちが自転車でやって来て、外野席でお弁当を食べている姿はなかなかいいものだ。

 関西の野球熱、強さを支えているのは甲子園へのアクセスのしやすさと関係があると私は思っている。

 草の根の強さを感じるのだ(春のセンバツ高校野球はいまだに外野席は無料)。

 夏の甲子園を見るには、体調管理をしっかりとしなければならない。

 昔と違い、朝8時から4試合を見ることは体力的に厳しくなってきた。とにかく暑い。

 直射日光が当たる席だと、日焼け対策をしないと、ものの数十分でやけどをしたようになる。

 見ているだけでもしんどいのだから、プレーする選手たちへの負担はどれほどのものになるのか。

 1回戦、2回戦の間は試合間隔が空くから回復も追いつくだろうが、勝ち進めば勝ち進むほど体力が削られ、試合内容が大味になってしまうという矛盾。変化が必要なのは、誰の目から見ても明らかだ。

 7月中旬、昨年の甲子園に春夏出場を果たした神奈川・慶應義塾高校の森林貴彦監督に話を聞いた。

 森林監督はいう。「100回という節目の大会が終わり、これからは200回という次の節目に向かっていきます。これまで、高校野球は日本に社会的な影響力を与えてきましたし、甲子園という場所が果たす意味も大きかった。しかし、状況は変わりつつあります。中学レベルでは野球人口は明らかに減っています。会場、日程、球数制限、登板間隔、丸刈り。議論すべきことはたくさんあります。次の100年に向けて、タブーなき議論を重ねていくことが、高校野球にとって大切なことだと思っています」

 確かに、甲子園には変わらないことによって保たれる価値がある。

 その価値が大きいため、変化に対して消極的な面があることは否めない。森林監督は、オープンな議論がいまこそ必要だと唱える。

 連綿と続いてきた甲子園は、日本の大切な「文化」の領域に入っている。

 文化を守るためにはさまざまなアプローチがあるが、高校野球はどの方向に舵を切るのだろうか。

 向こう数年の議論が、100年後の高校野球に大きな影響を与えるに違いない。だからこそ、議論を戦わせる必要がある。

生島 淳(いくしま・じゅん)プロフィル

1967年、宮城県気仙沼市生まれ。早大を卒業後広告代理店に勤務し、99年にスポーツライターとして独立。五輪、ラグビー、駅伝など国内外のスポーツを幅広く取材。米プロスポーツにも精通し、テレビ番組のキャスターも務める。黒田博樹ら元大リーガーの本の構成も手がけている。

関連記事