【論説】越前市中心部の蓬莱町で蔵などを生かして街並みを整備し、中央の広場を当時の高校3年生が「蔵の辻」と名付けてから、16日で20年目に入る。アート、伝統産業区域などにゾーニングされて整備が進む市中心部で、蔵の辻が「歴史が見える越前市の顔」として親しまれ生かされていくには、「普段使い」の拡大が鍵となる。

 まちなか空間の蔵の辻は広さ約千平方メートル。市中心部という立地、大正-昭和期の蔵などに囲まれた適度な閉鎖性による居心地の良さ。公園でもあり、通りでもあり、「辻」の名が示すように4方向から入れて、抜けて行ける。散歩がてらにふらりと立ち寄れる気軽さと、歴史情緒に浸る得がたい魅力が蔵の辻にはある。蔵を店舗とする喫茶店やバーも並ぶ。

 個人単位で利用するなら、例えばストリートミュージシャンのステージに、家族がスイカ割りを楽しむ場所に、囲碁や将棋愛好家の対局場になり得る広場である。

 そうした、蔵の辻を遊びに生かせる人たちを引き寄せる工夫や働きかけを施したい。利用者のマナー順守、周囲の理解を大前提に、蔵の辻を楽しむきっかけを広く投げかけてはどうか。利用規定をもっと知ってもらい、市民の普段使いにつなげていくべきだ。

 さまざまな利用の仕方が広がって、ふらりと楽しめる「音楽の辻」「夏はスイカの辻」「将棋の辻」などになっていけば、見に行く人も増える。何かやってないかと、足を延ばす人も出てくるだろう。

 まち歩きの楽しみは、おもしろいモノやコトを探してぶらつくことにある。「何かがあるかも」という期待感のあるまちは、まち歩きする人を誘引する。

 蔵の辻のある一角の整備は1995年~2002年にかけ、当時の武生市が街並み環境整備事業として手掛けた。区域面積は全体で1・6ヘクタール。商業施設を誘致するなどとした当初の再開発計画を断念し百八十度転換する英断がなされ、歴史と文化を生かす整備を目指した経過がある。01年に国土交通省の都市景観大賞に選ばれた。

 蔵の辻利用申請の窓口となる越前市のまちづくり会社「まちづくり武生」は「ごみの始末や利用のマナーは守っていただきたいが、例えば個人で花見をするなどは届け出は不要。まちなかのにぎわい創出につながり、営利を目的としない催事利用では原則、利用料は減免される」としている。利用のハードルは決して高くないのである。

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