【論説】米国のエスパー国防長官が来日し、岩屋毅防衛相との会談で、イラン沖ホルムズ海峡を航行する船舶の安全確保に向けて、米国が結成を呼び掛けている「有志連合」への参加を求めた。

 岩屋氏は「総合的に判断する」などと述べるにとどめたが、ここに来てイランから約220キロ以上離れるアラビア半島南部イエメン沖に自衛隊を派遣する案が浮上。同海域の近くで海賊対処に当たる海上自衛隊の艦船などの転用により、日本独自の派遣とすることも視野に入れているという。

 日本が輸入する原油の8割以上が通過するホルムズ海峡は「生命線」であり、自国のタンカーなどの安全な航行の確保は重要な課題であることは確かだ。

 ただ、緊張を招いたのは米国であり、イランの核開発を制限しようと関係各国が苦心の末にまとめ上げた核合意を一方的に破棄し、制裁を復活させたのはトランプ大統領だということを忘れてはならない。

 日本独自の派遣といっても、イランが米主導の有志連合という「包囲網」に加担したとみなせば、攻撃対象にもなり得るだろう。日本が築いてきた友好関係が崩壊しかねない。

 米国は今のところ、海上監視のための艦船や航空機などの派遣のほか、中央指揮所への要員派遣と資金の拠出などを求めているとされるが、具体的な行動は詰め切れていないようだ。

 60カ国以上を招き、参加を促す会合を数回開催している。だが、参加を表明したのは英国だけ。当初欧州主導の護衛体制を主張していた前政権の方針を、ジョンソン新政権が転換した。ドイツは不参加を表明。他の各国は様子見の状況だ。

 参加国が限られるようだと、米国は日本への要求のハードルを上げてくることも想定される。トランプ氏は、ホルムズ海峡への依存度が高い国こそ重い負担を負うべきと主張している。

 安倍政権の中枢などから「何もしないわけにはいかない」との声が上がっているという。だが、日本としては各国の動向も見極め慎重に対応を検討すべきだ。それにも増して優先すべきなのは、イランとの友好を生かしつつ地域の緊張緩和を促す外交努力だ。

 安倍晋三首相は6月にイランを訪れ、仲介外交に取り組んだ。しかし、日本などのタンカーが攻撃を受け、米メディアは「中東和平における初心者プレーヤーが痛みを伴う教訓を得た」などと揶揄(やゆ)した。

 首相は懲りたのか、その後の動きはない。6日の会見では「中東の緊張緩和へ、できる限りの役割を果たす」と述べた。来年の大統領選しか頭にないトランプ氏を説き伏せ、イランにも対話を働き掛けるなど役割を果たすべきだ。

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