【論説】自国の中央銀行に利下げを迫り、実現した途端、第4弾の制裁に踏み切ることを表明。さらには「為替操作国」に認定し、通貨戦争を仕掛ける―。

 トランプ米大統領の中国に対する強硬姿勢はとどまるところをしらない。とりわけ「為替操作国」認定は、米財務省が半年ごとに公表する外国為替報告書で行われる。直近の5月の報告書では見送られており、唐突感は否めない。

 2016年の大統領選でトランプ氏は就任後、中国を為替操作国に認定すると公約していた。来年の大統領選に向けて支持層に公約実現をアピールする狙いがあるのだろう。折しも民主党の第2回候補者討論会が開かれた直後のこと。第1回討論会の際は、北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長に板門店(パンムンジョム)での会談を呼び掛け実現させた。自身への注目を集める狙いが透ける。

 だが、再選のためのなりふり構わない振る舞いは自国経済の弱体化も招きかねない。米国の企業や国民も中国に対する制裁関税でマイナスの影響を受けている。米国ブランドのスマートフォンなどを含む第4弾に関しては、産業界から反対の声が相次いでいる。

 対する中国は、米国の追加関税に対して、同規模の対抗措置が取れない実情がある。米国は、中国が人民元の切り下げで制裁の緩和を図ろうとしたとみているが、経済の減速を受け市場が人民元安に動いたというのが実情ではないか。

 今後、対抗策としてレアアースの禁輸や米国債の売却などが取り沙汰されているが、それらに踏み込めば、さらなる応酬合戦は必至だ。泥沼化は消耗戦となり、米中の経済は悪化の一途をたどることになる。

 1、2位の経済大国の貿易、通貨戦争がもたらす世界経済への悪影響は計り知れない。対立激化は各国の金融・証券市場を揺さぶっている。日本も急速な円高で自動車や電機などの業績に影響が出始めている。

 日銀は必要に応じて追加緩和を行う構えだが、手詰まり感は否定できない。措置を講じたとしても、米国は為替操作に関して、日本を監視対象国としている。中国のように通商交渉のカードとして使われる可能性も想定すべきだろう。

 輸出産業への悪影響が中小企業など日本全体に及ぶ懸念もある。そうした状況で10月の消費税増税を迎えれば、企業業績と個人消費の悪化というダブルパンチとなる。景気の腰折れは避けられない。

 安倍晋三首相は6日の記者会見で「仮にリスクが顕在化する場合には、躊躇(ちゅうちょ)することなく機動的かつ万全な対策を講じる」と述べた。リーマンショック級とは言わないが、「危険水域」を自覚し備えるべきだ。

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