【越山若水】一つの楽曲を、練習を始めたときから正確に演奏できることなどあるのだろうか。それを求める指導は正しいのか? 米国のピアニストで教育者のウィリアム・ウェストニー氏は、そんな疑問からミスの意味を考え続けた人である▼結果、ミスに2種類あると結論付けた。著書「ミスタッチを恐れるな」で「正直なミス」と「不注意のミス」があると書く。前者は肩の力を抜き「自分のエネルギーに任せて」演奏しているときに生まれる。後者は「正確に終わらせる」ことだけが目的だと忍び寄る▼違いがやや分かりづらいが「伸び伸び」と「縮こまっている」の差と考えれば良いだろう。その結果は随分変わってくる。正直な方は問題点を体で知る貴重な機会だから、正しい動きを早く理解できる実りあるミスとなる▼対して不注意なミスを犯すときの心理は「いつもこんな失敗しないから」「全体は良かった」との言い訳につながりがち。この場合、ミスが発するメッセージに気づかず、仮に成功しても喜びというよりホッとして終わる▼同氏は、萎縮せず「自分の体の動きを楽しむ」ならステージは豊かになると説く。そして、音楽家だけでなく、アスリートにもあてはまると言っている。インターハイなどで中高生の戦いは続く。甲子園の敦賀気比はきょう初戦。恐れずに、それぞれのエネルギーの可能性を見せてほしい。

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