【論説】かんぽ生命保険の不正販売問題で、顧客に不利益となった恐れのある契約が過去5年で18万3千件に上ることが分かった。当初の9万件の倍に及ぶというから、顧客らから不安や憤りの声が上がるのも当然だ。

 地方ほど郵便局への信頼が厚いとされ、福井県内でも被害はかなりの規模に達するのではないか。顧客救済に早急に取り組むとともに、原因究明や再発防止策は無論、企業体質を根本的に改める必要がある。

 不正の実態は顧客の信頼を大きく裏切るものだ。二重契約のケースでは、新契約の締結から旧契約の解約まで6カ月以上あれば、乗り換えではなく新規の扱いとなって営業成績が上がるため、解約を先延ばしさせた疑いが強い。

 逆に旧契約を解約した場合、3カ月以内に新しい保険を契約すると、乗り換えとなり営業成績に結びつかないため、契約を遅らせ、無保険状態に陥るケースがあったという。

 専門家からは「日ごろ身近にいる局員らへの信頼感などから契約した高齢者が多いとみられ、一種の詐欺とも言える」との厳しい批判が上がっている。顧客に無断で契約書類を偽造していた事例もあり、もはや犯罪という以外にない。

 こうした不正は、行きすぎた成果主義、ノルマが背景にあるとされる。保険の大半は日本郵便が郵便局などで委託販売している。給与体系の見直しで成果に連動する方式が導入され、局員らが不正に手を染めざるを得ない土壌もあった。

 31日に日本郵政とかんぽ生命、日本郵便の社長が記者会見した。郵政の長門正貢社長は「郵便局への信頼を大きく損ねたことで断腸の思い。深くおわび申し上げる」などと謝罪したが、遅きに失した感は否めない。

 筆頭株主の政府に配慮して参院選後の対応となったとの指摘がある。この間にも顧客からの問い合わせなどが殺到していたことを思えば、向く方向が違うと言わざるを得ない。

 約3千万件に及ぶ全保険契約について、顧客の意向に沿った契約であるか否か調査することも発表した。押しつけられることになる現場の局員らからは懸念の声も上がっているという。

 かんぽ生命は当初、顧客が同意しているとの理由で「不適切な販売でない」と主張した経緯がある。経営トップらの認識の甘さ、危機感の無さが、顧客だけでなく国民の疑念や不信感を招いている。

 日本郵政グループは利益の大半を金融事業で稼いでいる。それゆえ、営業偏重に走ったようだ。経営陣は現場の問題としか見ていない節があるが、自らの責任問題として調査し結果を開示しなければ、信頼回復はおぼつかない。

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