【論説】北朝鮮が25日に続き、再び日本海に向けて短距離弾道ミサイル2発を発射した。北朝鮮は25日の発射について、韓国軍への「厳重な警告」とし、8月上旬に予定されている米韓合同軍事演習の中止などを要求。今回も同様の狙いがあるとみられる。

 気になるのは、安倍晋三首相が25、31日の発射に関し「わが国の安全保障に影響を与えるような事態ではないことは確認している」と述べたことだ。今回の飛行距離は約250キロと推定されているが、25日のミサイルは約600キロを飛行。日本の一部が射程に入る恐れがある。

 低い高度を飛行したことを受け、立ち会った金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長は「防御が容易ではない戦術誘導弾の飛行軌道の特性と威力を確認できた」と表明した。実際にミサイル防衛網を打ち破る能力があるとすれば、韓国は無論、日本にとっても新たな脅威であり、安全保障に大いに影響を与えるものだろう。

 さらに、北朝鮮メディアが23日に公開した新型潜水艦について、韓国国防省は潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を3発程度搭載できるとの分析を示した。近く日本海の作戦水域に配備されるという。本格運用されれば、日米韓にとって核戦力の脅威が増大することになる。

 安倍首相は前提条件を付けず、日朝首脳会談の開催を呼び掛けている手前、強い姿勢は示せないのだろうが、北朝鮮に足元を見られる懸念は拭えない。北朝鮮メディアなどは日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を韓国に要求。日本政府による韓国への輸出規制を機に、日韓の分断をあおる狙いがあるのは明らかだ。

 金氏は6月末に板門店(パンムンジョム)でトランプ米大統領と会談した際、大陸間弾道ミサイル(ICBM)だけでなく中距離弾道ミサイルも発射しないと約束したとされる。トランプ氏は米国本土や米領グアム島を射程に入れるミサイルを警戒している。現に「発射実験は小さなものしか行っていない」と問題視していない。

 北朝鮮は約束外の短距離ミサイルの発射を今後も続ける可能性がある。日韓にとって由々しき事態だ。日韓には米軍基地もある。トランプ氏に北朝鮮の挑発を許さないよう説得すべきだ。ただ、トランプ氏は来年の大統領選しか頭になく、聞き入れられる可能性は低いのが実情だろう。

 北朝鮮の狙いは日米韓の分断にあることは明白ではないか。米国の機嫌を取りつつ妥協を引き出す、韓国には制裁解除に向けて揺さぶりを掛ける、日本は蚊帳の外のままという構図だ。日米韓はいま一度連携を強める時なのだが…。

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