【越山若水】戦力の「逐次投入」は愚策という。敵にかなわない戦力を出せば目的を達しないのみならず全滅する。それが繰り返されると全体が危機に陥る▼旧日本軍の組織的失敗を分析した「失敗の本質」(戸部良一ほか著、ダイヤモンド社)は1942年のガダルカナル島作戦について取り上げ、陸軍は島の価値や米軍の戦力を分かっておらず、気づいたとしても時に無視したと書いている。任務の目的や状況判断を見誤った結果が典型的な逐次投入につながった▼この話を、どうも豚コレラの現状から連想してしまう。飼育豚へのワクチン接種という防疫上の「切り札」を国は今のところ使っていない。感染ルートが解明しづらくなる、豚の移動制限が必要になる、などが理由だ。殺処分と早期発見で感染を抑える考え方を取る▼一番の障害はワクチンを使うことで国際的な「清浄国」に復帰できなくなる懸念だろう。限定的な使用なら復帰可能との見方もあるが、農林水産省は及び腰。非清浄国となれば貿易にさまざまな影響が出るという。ただ、感染抑え込みは素人目に失敗していると映る▼このままだと貿易どころか養豚全体が危うい。政府・自民党にはワクチンの検討をようやく始める動きもあるようだ。農水省自体がワクチンの最大のメリットに挙げているのは「農家の安心」。これにまさる行政の目的は、ないと思うのだが。

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