【越山若水】「お金」には長い歴史がある。日本では飛鳥・白鳳時代の無文銀銭、富本銭に始まり、中国からの輸入銭や自国貨幣の使用などを経て、現代はプリペイド式の電子マネーまで用いられる。さらに近年は仮想通貨(暗号資産)が登場し世界的に論議を呼んでいる▼「歴史上は、社会の圧倒的多数を占める庶民の通貨への需要こそが、通貨のありようを左右してきた」と説くのは、安田女子大准教授の高木久史さん(45)。経済書としても評価された「通貨の日本史」(中公新書)の著者だ▼戦国時代の福井県の状況について、福井市で講演した。16世紀は中国から日本への銭の輸出が禁止され、日本全体で金属貨幣が不足した。このため、以前なら品質が悪く排除された銭も活用。1枚1文の「等価値使用の原則」が崩れ、1枚1文未満の価値しかない減価銭が基準銭として流通した▼さらに銭を使わない信用取引であるツケ払いが頻繁に行われた。実際、越前府中(現越前市)と京都の商人の間で信用取引があったことを示す記録も残る▼歴史をみると、政府が通貨の発行を独占し管理するのではなく、「民間が創造した通貨を政府が追認することの繰り返し」と高木さん。日本では2016年、仮想通貨を決済手段として認める改正資金決済法が成立した。最近は暗号資産の功罪を巡る議論が盛んだ。歴史からもヒントを探りたい。

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