【越山若水】梅雨明け後、暑さが一気にやってきた。それで、氷で遊びたくなって、板氷を買った。これを手のひら大の立方体に割り、アイスピックで角を落としていく。オン・ザ・ロック用の球状の氷「アイスボール」を手作りしようとした▼球体は表面積が小さいので氷が解けにくく飲み物の風味を守ってくれる。作り方は「ひんやり氷の本」(池田書店)に学んだ。ただ、失敗した。氷を持つ左手が冷たさに悲鳴を上げ、ひしゃげた粘土みたいな形になったところであえなく降参。全くの修業不足だった▼同書で興味深い知識を知った。氷は分子の結合の違いから10以上の種類が見つかっている。そのうち、私たちがよく知る氷には他と決定的に違う点がある。「水より軽く、浮く」ことである。何げないこの事実こそが、地球を生命あふれる星にした大きな理由らしい▼氷河期、地球は大部分が氷に覆われた。それでも、海の底などで生き延びた生き物がいた。地球の氷が、水に浮く性質のものだったからこそだ。そもそも、水と氷、そして水蒸気が、一つの天体に同時に存在していること自体、極めて珍しい。まさに奇跡の星である▼かき氷として食する。そうめん、麦茶をおいしく冷やす。氷柱の涼味に浸る―夏場の氷は私たちを喜ばせる。気候変動のニュースは後を絶たないが、貴重な水や氷の循環を、いつまでも保ち続けたい。

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