【論説】参院選終了後、安倍晋三首相や自民党幹部などから「消費増税は信任された」との発言が相次いだ。しかし、世論は半数以上が増税に反対だ。これらの発言には違和感を持たざるを得ない。

 このままなら増税は10月に行われる。それは国民は知っている。それでも不安を感じ、できれば避けたいのが当たり前の国民感情だ。痛みを強いる政策について、信任されたと安易に決めつける態度に、おごりはないのか。

 参院選で与党は改選過半数を取った。二階俊博幹事長が安倍首相の総裁4選論を口にしたのは、選挙結果へ党内に大きな不満が出ていないことを物語る。安倍自民が「勝った」との言い方も誤りではないだろう。

 しかし、本紙が加盟する共同通信社が参院選後に行った調査で、消費増税に反対は55・9%。賛成の39・8%を上回り、選挙の前後でも目立った変動はなかった。自民に投票した人も消費税を争点とは考えなかったといえないか。自民支持者は他の政党支持者や支持なし層に比べ増税賛成派が多いが、それでも4割以上が反対である。

 安倍首相は選挙前、「悪夢のような民主党政権」のフレーズを口にしていた。また、立憲民主党の枝野幸男代表のことを「民主党の枝野さん」と何度も言った。個別政策の訴えより「自公政権を継続するのか、旧民主党の政治に戻すのか」の選択を迫る構図にしたかったのだろう。ところが選挙が終わった途端、「増税が信任された」と言い出すのは、自民支持者にとっても興ざめではないか。

 過去の消費増税は、景気の足を引っ張ってきた。世界の経済情勢は今も決して油断ならない局面にある。米中貿易摩擦は相変わらず見通しが立たない。英国では欧州連合(EU)離脱強硬派のジョンソン氏が新首相に就き、合意なき離脱の可能性が高まる。欧州中央銀行(ECB)は政策金利の早期利下げを示唆した。イラン情勢も懸念が大きくなる一方だ。

 これらの成り行きを政府は慎重に見極める必要がある。増税は既定路線としても、実施時期が近づく今こそ、政府・与党は国民の不安解消のため丁寧に説明すべきことが山積みである。

 参院選の比例代表で、自民の全有権者に占める得票割合「絶対得票率」は、約17%。5人に1人に満たない。安倍首相は「自民党へ強い支持をいただいた」と言ったが、決してそのように胸を張れる状況にはなっていない。

 安倍自民は「勝った」からこそ、振る舞いが試されていると知るべきだ。国民の声に耳を傾ける謙虚さが見られないようでは、支持は簡単に離れるだろう。

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