【論説】英国の新首相を選ぶ保守党の党首選は下馬評通り、欧州連合(EU)からの「合意なき離脱」も辞さない強硬派のボリス・ジョンソン前外相が選出された。メイ前首相が離脱方針を巡る議会の支持取り付けに失敗し、離脱期日は既に2度も延期された。混乱が続く中、ジョンソン氏は打開できる唯一の候補として期待を集めた格好だ。

 ただ、EU側はメイ前政権との合意案の再交渉には応じない姿勢を貫いている。ジョンソン氏は「合意なき離脱もいとわない」と強硬姿勢をちらつかせ、再協議を迫る構えだが、折り合いが付かなければ「合意なき」が現実味を帯びる。何の進展もないまま10月31日の離脱期限を迎えるのが最悪のシナリオだろう。

 英国内には2度の離脱延期でリスクへの備えが整い実際の影響は少ないといった希望的観測がある一方、延期に慣れっこになり、対応策を決めていない企業も多いという。拠点をEUに移すなど日本企業も対策に本腰を入れる必要がある。通関手続きによる物流や部品供給網への影響も避けられない。他国との協定や合意が一夜にして白紙になる事態は想定外の混乱を伴うのは必至だ。世界経済への悪影響も危惧される。

 前回総選挙でEUからの「完全離脱」を掲げた保守党にとって、「決められない政治」を脱却し離脱を果たすことが至上命令だ。メイ政権の迷走に多くの国民がうんざりし、支持率で早期離脱を掲げる新党の離脱党や、離脱撤回を掲げる自由民主党に抜かれる場面もあった。

 ジョンソン氏の強硬路線に託すしかないのが実情だろう。ただ、新党首を選んだのは16万人の党員であり、有権者の1%にも満たない。党員の多くが白人、男性、55歳以上と偏りは否めず、国民の幅広い信任を得たとは言い難い。与党内の親EU派の議員は、ジョンソン政権が合意なき離脱に走った場合、野党の内閣不信任案に同調する構えも見せている。

 ジョンソン氏は英紙記者時代にはEU批判で名をはせ、ロンドン市長選では一転して親EU色を打ち出して当選。さらに2016年の離脱を問う国民投票では離脱派に転じた経緯がある。英メディアからポピュリストとみなされ、強硬姿勢を軟化させる可能性も取り沙汰されている。

 EUは再協議を拒否しているが、総選挙や再度の国民投票を行う場合、離脱期限延期に柔軟な姿勢という。ジョンソン氏は袋小路に陥っている国論をまずは、まとめるべきではないか。外交ではタンカー拿捕(だほ)を巡るイランとの対立が続いている。新政権は「内憂外患」をどう乗り切るか。試練のスタートとなる。

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