【越山若水】福井市の市制施行から、ことしは130年になる。福井市立郷土歴史博物館は館蔵品ギャラリーで初代市長に就任した旧福井藩士・鈴木準道(のりみち)を紹介している。市長就任時のきりりとした48歳の表情、ひげを生ややし、古武士のような風格が漂う晩年の写真が印象的だ▼中級藩士の家に生まれ旧藩時代には郡奉行(こおりぶぎょう)を務めた。明治初期に、現在の越前市で起きた用水をめぐる紛争の解決に尽力。これに村民は感謝し藩主、用水役人とともに3人を祭神とする三社神社を建立した。今から5年前に、同市北町の神社に3人の子孫が集い150年記念祭が営まれた▼明治維新後、東京で旧藩主松平家の管理者になっていたところ、市議会から市長候補の推挙を受けた。5年8カ月の任期中、市役所の組織整備、小学校の統合創設、鉄道北陸線の建設請願、電灯事業の開始など市の発展の基礎をつくった▼同博物館の山田裕輝学芸員は「江戸時代からの知識、経験を持ち合わせ、士族や商人との一体感もあり、行政手腕が卓越していた」と評価する▼1889(明治22)年8月18日、市役所開庁式で鈴木は祝辞を読み上げた。「地方自治は国と地方の共同事務によって民衆の幸福を増進し、秩序の安定を期すこと」。令和最初の福井市長選が12月に行われる。時代は変わっても、市長には理想を高く掲げ、市民の先頭に立つ志が欠かせない。

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